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■特攻〈5〉

 慰霊碑は、戦友たちが散った南を向いていた。1979年10月。桑原敬一さん(88)は、34年ぶりに串良(鹿児島県鹿屋市)の基地跡に立った。

 空は青くて、山の緑が濃くてね。わたしの記憶の中の串良は、灰色一色だったんです。出撃の朝に見た開聞(かいもん)岳以外、色彩の記憶がない。ああ、こんなに美しい場所だったんだ、と。

 碑の前で目を閉じた。若い顔がいくつも浮かんだ。