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乃木坂46『何度目の青空か?(DVD付C)』(ソニー・ミュージックレコーズ)
ライター・物語評論家のさやわか氏、『「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う』の著者で、AKB48グループや乃木坂46に詳しいライターの香月孝史氏、講談社主催の女性アイドルオーディション企画「ミスiD2014」の準グランプリであり、乃木坂46の熱烈なファンとして知られる、わたしがレイチェル氏による、乃木坂46についての対談。前編【乃木坂46は今後どこに向かうのか? レイチェル×さやわか×香月孝史が徹底討論(前編)】では、乃木坂46の魅力やライバルグループであるAKB48との差異などを語り合ったが、後編では、これまでのシングル10枚についてのチャートアクションやセンターを巡る物語、注目のメンバーや今後への期待について、話が展開していった。
――乃木坂46は、セールス面でも徐々に伸びてきました。
さやわか:『夏のFree&Easy』のみ、前作比で初週の売上を落としているんですが、それ以外は基本的に右肩上がりです。その中で、『君の名は希望』のみが、“オリコン200位以内に65回ランクイン”という数字を叩き出しています。一般にロングヒットになる曲というのは単純なアーティスト人気に頼らない、本当に楽曲に力のある「名曲」でして、この曲はその条件をしっかり満たした優れたものだと言えます。ちなみに、それまでの曲が32回(『ぐるぐるカーテン』)、33回(おいでシャンプー)、23回(『走れBicycle』)、31回(『制服のマネキン』)と遷移していくなかで、急に65回にまで伸び上がったわけで、これによってグループの注目度が上昇したものと思われます。ただ、32回、33回というのも相当すごい数字で、最初から安定したグループだったというのがわかります。しかし、その『君の名は希望』でグループの方向を一つ決め、注目を集めたと思いきや、次がセンターを白石麻衣に替え、楽曲もこれまでと全く違い、疾走感のあるロック調になった『ガールズルール』が来るんですよね。想像ですが、これは名曲の後にコマーシャルなことをやってドーンといくという意図がしっかりあったんだと思います。それをやったことによって、実際に『ガールズルール』はちゃんと40万枚以上売れる結果を生みました。
香月孝史(以下、香月):コマーシャルなことをやって世に届ける役割になったんですね。
――5枚目の『君の名は希望』を基点に、グループの構図も変化しています。それまでのセンターは生駒里奈で、これ以降は白石麻衣、堀未央奈、西野七瀬、生田絵梨花と、センターを巡る乃木坂46の物語が大きく動き出します。
さやわか:『ガールズルール』はあくまでもピンポイントでドーピングしたかったんじゃないですかね。その分を『バレッタ』『気づいたら片想い』という2曲で、本来の楽曲イメージに戻そうとした。
わたしがレイチェル(以下、レイチェル):『バレッタ』で堀さんがセンターになったときは、かなり「おぉ!?」ってびっくりしました(笑)。ぬくぬく見てきたので、「これからは気を引き締めて見ないと」と(笑)。
香月:それまではぬくぬく見られてたんですね(笑)。
レイチェル:いちファンとして、自分の推しの子が選抜に入れるか入れないか、と気にするんですけど、「センターは生駒さん」という絶対的な感覚があったので驚いたんです。でも、堀さんは黒髪で清楚で、何となくベクトルが生駒さんと似ているところがあるからそうでもなかったんですけど、西野さんがセンターになったときは、全然タイプが違うのでびっくりしました。
香月:西野さんは『気づいたら片想い』『夏のFree&Easy』の2作でセンターを任されています。複数回センターを務めたのは生駒さんの他には西野さんだけですよね。一方で、次の『何度目の青空か?』は、生田さんがセンターとして活動に復帰して、いつになく期待度が高まっている。楽曲としても今作の注目度が高くなればなるほど、その直前にセンターだった西野さんが可哀想な役回りをしているように見えてしまう面もある。
さやわか:乃木坂46の場合は箱推し的に見るファンが多いせいか、「あいつがセンターになったから駄目になった。下ろせ」という感じではなく、「このタイミングでセンターやらされるのはちょっと可哀想だね」という雰囲気になるのは面白いです。
レイチェル:でも新曲を見ると、そういう役回りを経て西野さんが逞しくなっているのが見て取れて、白石さんと双璧をなす存在になっていると感じました。だから損ではあるかもしれないけど、その流れにもちゃんと意味があったんだと感動しました。
左から、香月孝史氏、さやわか氏、わたしがレイチェル氏。
さやわか:ここ最近は、ちゃんとメンバーの面白さや強さなどを見せる方向にシフトしているような気がします。たしかに最初は曲も良くて、トータルコンセプトも含めてクオリティが全体的に高いアイドル、という感じではありましたけど、そういう部分だけではなく、個人個人に注目させることができるほどにグループとしての知名度が上がって、しかもメディアを効果的に使っているように見えます。
香月:今年の“笑い”をテーマにした『16人のプリンシパル』は、正直上手くいかなかった部分もあったと思っているんですが、よりパーソナリティを見せるような結果になったということは間違いないと思います。
さやわか:それが彼女たちの課題だという見方もあります。というのも、近年のアイドルの多くは、握手会のような接触や人の力で初動を売るというやり方をしていて、「初動は伸びるけどロングヒットにならない」というケースが多い。そんな中、今までの乃木坂46の場合は安定して30回以上チャート200位以内に残っていたんですが、『気づいたら片想い』は18回、『夏のFree&Easy』は13回と、次第に残れる回数が減ってきている。
香月:パーソナリティ優先になってしまうと、そういう人柄に触れて繋ぎ止める文脈から外れた途端すぐにチャートから落ちてしまうと?
さやわか:そうです。本人たちの露出度と曲の売れ行きがイコールになるので。「曲が良いから売れている」もの、俗に言う「名曲」って、その人が露出していてもそうでなくても、ずっと売れるんです。なので、乃木坂46にはアルバムで、「曲が良い乃木坂46」というイメージを取り戻して欲しいですね。アルバムって結局、音楽の良さが問われるものですから。ちなみに『何度目の青空か?』の今のところの推移は、初週が47万枚で、今までで一番ですね。うまく舵取りをしながら、名曲路線で初動を更新したのはうれしいですね。
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