震災・原発事故後初めてとなった福島県知事選で自民、公明、民主、社民各党が支援した内堀雅雄氏が当選した。3年7カ月を経て県民の中には対立や先行き不安への疲労感も目立つ。勇退する佐藤雄平知事を副知事として支えた内堀氏には、復興を前に進め、成果を形にすることが求められる。

 県内原発の全廃では県民が一致している。着実な廃炉、原発に代わる新たな産業ビジョン、復興財源や人手の確保、放射線被害への取り組み――。

 課題は尽きないが、とりわけ急ぐべきは避難者の生活再建だ。直接的な支援は住民と接する市町村が中心でも、県が果たす役割もある。

 いわき市は地価高騰と住宅不足に悩む。元の住まいに近く、気候や風土も似ているいわきで新生活を、という長期避難者の流入が続いているからだ。

 市は県に宅地開発ができるよう都市計画法上の区分見直しを求めたが「2年以上かかる」と言われた。市は県を飛び越えて国と相談し、特例措置の適用や売却時の所得税の減免といった施策を示すことで、道筋をつけた経緯がある。地元自治体から上がる行政ニーズをくみ上げて国を動かすことは、県の役割のはずだ。

 避難先の仮設住宅や借り上げ住宅で暮らす住民と行政をつなぐ役割を担う復興支援員をめぐっても、不満があがる。

 市町村ごとの制度に加えて県が独自に取り組んでいるため、縦割り行政の弊害が生じている。「原発事故による避難者は支援できるのに、津波の被災者には支援ができない」「同じ地域にいても他の町の避難者は対象外」といった問題だ。「県が現場の声を吸い上げて整理し、効率化すべきだ」との声も聞かれる。

 原発事故の収束も放射線の問題も、将来の見通しがつかない問題だ。人や地域によって事情や受け止め方が異なり、それが賠償問題などともつながって分断を生み、政策を進めにくくしている。それが、福島が直面する問題の難しさだ。

 「違い」の尊重は欠かせない。だが、そのうえで広域的な視野から共通項や優先順位を探り出し、国や市町村と調整して限られた予算や人材を効果的に配分していく。現場で閉塞感や焦りが強まっている今だからこそ、県の役割が重要になる。

 3年7カ月の経験を生かして何ができるか。新知事の座右の銘は「進取果敢」だという。生活再建をはじめとする福島の復興に力を尽くしてほしい。