10月17日、2027年開業を目指すJR東海<9022>のリニア中央新幹線工事に国からの認可が下りた。東京(品川)~名古屋間を時速500km・最短40分で結ぶこの計画は、総工費5兆5千億円を予定し、費用はJR東海が全額負担するとしている。
申請からわずか2ヶ月というスピード認可だ。JR東海の柘植康英社長は「全力で取り組む」と宣言し、太田国土交通相も「国民生活や経済活動に強い影響をもたらす重大な事業」と承諾した。しかし、国会での十分な議論や、国民への説明が不十分のままに着工を急いでいる印象も強く、不安の声も少なくない。国とJR東海がリニア事業を急ぐ理由と、それに対する疑問をまとめてみた。
リニア事業を急ぐ理由には、「国内外への経済効果」と「交通動脈の複数化」が考えられる。経済効果に関しては、もちろん国内での観光・ビジネス利用の増加、そして輸送のスピードアップ・量的増加が最大の目的だろう。同時に国外に対しては、リニア技術の輸出アピール、日本へのさらなる観光客誘致の材料となる。
もう一つの理由である交通動脈の複数化は、新幹線の経年劣化が遠因にある。大規模な改修は行われているものの、東海道新幹線は今年で50周年。いつまで使い続けられるのか、不安の声も上がってきている。また、地震などの災害で大都市を結ぶ交通動脈が止まってしまった場合、復旧・救援活動の緊急性を考えると、重要な交通動脈を複数化しておくことは非常に重要だ。
これらの理由からリニア事業を急ぐのは分からなくはない。特に経済効果に関しては50年前の東海道新幹線と重ね合わせ、「リニア開通で経済成長の夢をもう一度」という思いも大きいのだろう。しかし、沿線住民への十分な説明や周辺環境への影響については手つかずのままで、先回りして認可を行った感は拭えない。
これから人口が減少していく中で、ビジネスでも観光でも長距離高速移動の需要が爆発的に増えることは考えにくい。ただでさえ、インターネットの普及で出張などの必要性は減っている。将来、さらに通信面が進化すればそうしたビジネスの効率化は進み、移動の必要性は少なくなるだろう。総工費5兆5千億円という巨額が回収できるのかは不透明だ。また、費用はJR東海が全額負担するとしているが、着工途中にトラブルや超過費用が生じた場合、国が支援に乗り出す可能性も少なくない。もしそうなった場合、議論が不十分なままで国民は納得ができるだろうか。
計画が順調に進めば45年には大阪まで延線し、東京~大阪間を67分でつなぐという。しかしその場合の総工費は9兆円だ。夢を語るのはいいが、その前により慎重な議論と説明が必要ではないだろうか。(編集担当:久保田雄城)
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※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。
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