少子化が進行していますが,その要因は2つの局面に分けて考えることができます。①結婚しない男女が増える,②子どもを産まない夫婦が増える,の2つです。
①については言わずもがなですが,②のほうはどうなのでしょう。結婚しても子どもを産まない,ないしはその数を抑える・・・。こういう夫婦も多くなっているのでしょうか。子どものいない共働き夫婦(DINKS)なんていう言葉も出てきていますしね。
私は,有配偶女性ベースの出生率を計算してみました。白書等で見かけるのは,全女性ベースの出生率ですが,ここでは夫のいる有配偶女性をベースに充てるわけです。こうすることで,非婚女性の量,すなわち未婚化の影響を除くことができます。
2010年の間に,25~29歳の母親から生まれた子どもの数は30万6,910人です(厚労省『人口動態統計』)。『国勢調査』から分かる,同年10月時点の20代後半の有配偶女性は130万3,214人。よって,25~29歳の有配偶女性ベースの出生率は23.6%となります。100人の有配偶の母親から,24人の子どもが生まれた,ということです。
このやり方で,各年齢層の有配偶女性ベースの出生率を明らかにしました。下の図は,1950年から2010年までの時系列カーブです。
減少一途の右下がりの曲線になるかと思いきや,そうではありません。てか,最近になって上がっているではありませんか。来年の2015年は『国勢調査』の実施年であり,上記の曲線をもう5年延ばせまずが,戦後初期の頃の水準に立ち返っているかもしれません。
白書等に載っている人口ベースの出生率は減少の一途をたどっているのですが,結婚している女性を分母とした出生率は上昇しているのですね。そういえば,夫婦当たりの子ども数は2.5人くらいで昔も今も変わらない,という知見を報告した論文を見たことがあります。
少子化の要因として,冒頭で挙げた2つのうち①の局面が大きいようです。山田昌弘教授の『パラサイト・シングルの時代』(ちくま新書)でもいわれていますが,やはり未婚化が効いているんだなあ。西欧と違って,わが国では婚外子は全然少ないし。
①と②の要因を並べたグラフも提示しておきましょう。①は,出産期(20~30代)の女性の有配偶率,裏返せば非婚(≒未婚)率です。②は,同じ年齢層の有配偶女性ベースの出生率です。
未婚化が進んではいるが(①),結婚している女性から産まれる子どもの量は増えている(②)。こういう傾向が読み取れるかと思います。とくに近年にあっては,両者のコントラストが際立っています。2015年まで曲線を延ばしたら,どうなっているでしょうか。
最近,「婚活」という言葉が生まれ,各自治体も男女の「出会いの場」をつくることに躍起ですが,なるほど,こういう取組の必要性を支持するデータです。と同時に,結婚という型にとらわれない同棲や婚外子への許容度も高めていくべきなのか・・・。『世界価値観調査』などでみると,日本は,イスラーム国と並んで,これらに対する許容意識は格段に低い社会なり。
「男女の出会い→婚姻→出産」というコースがありますが,2番目のステップがどれほど省かれることになるのか。西洋から遠く離れた東洋の島国・日本でも,こういうことが問われることになったりして。その極限形は,産まれた子どもは共同体全体で育てるという未開社会です。
0 件のコメント:
コメントを投稿