東証マザーズ上場企業で、ソフト開発や太陽光事業を手掛けるリアルコムが乗っ取りに遭い、大揺れに揺れている。この事件の本質には東京株式市場が抱える諸問題が凝縮されており、単なるお家騒動などではない。現在進行形の暗闘をレポートする。
10月17日の午後、ある人物が東京・霞が関の金融庁を訪ねた。訪問先は証券取引等監視委員会(SESC)。訪問の目的は、告発状の提出である。告発の対象となるのは、東京証券取引所マザーズ市場に上場するIT企業のリアルコムを乗っ取った現経営陣。告発したのは、被害に遭った旧経営陣だ。
この人物が告発状を提出する先はSESCだけではない。この記事が読者の目に触れるころには東証にも関係書類を提出し終え、警視庁捜査二課聴訴係にも書類を提出して“相談”する手はずだ。
今、筆者の手元にはその告発状の写しがある。「リアルコム株式会社に関わる不適切な審査プロセス及び経営陣の不正行為に関する管理監督のお願い」と表題が付いた告発状は、A4用紙9枚の本文に多数の関連資料が添付されたもの。財務や経営などに関する開示情報に不審な点が多いこと、現経営陣に法令順守の意識が希薄で、企業統治にも問題が多いこと──などの問題点が列挙されている。もちろん乗っ取りの過程についても生々しく記されており、暗闘の記録といってもいいだろう。
告発状を基に、リアルコムで何が起きたのか説明しよう。2000年に創業したリアルコムは、企業向けの情報共有ソフトの開発・販売を手掛けるベンチャー企業だった。07年に上場したが、つまずきはその翌年に訪れる。買収した米国企業がリーマンショックのあおりで期待したようには収益を伸ばせず、のれん代の償却を求められて債務超過に陥ったのだ。