The Economist

ユーロ圏:世界最大の経済問題

2014.10.27(月)  The Economist

(英エコノミスト誌 2014年10月25日号)

ユーロ圏のデフレは、すぐそこまで迫ってきており、極めて危険だ。

ダボス会議閉幕、楽観ムードに警鐘鳴らす専門家の「ユーロ圏崩壊」予想

ユーロ圏はこの2年ほどの猶予期間を無駄にしてしまった〔AFPBB News

世界経済は良い状態ではない。米国と英国から届くニュースはまずまず前向きだが、日本経済は苦戦しており、中国の成長率はいまや2009年以来の低さとなっている。

 予測不能の危険要因があふれている。とりわけ大きなものが、西アフリカで数千人もの命を奪い、それにとどまらず世界中の人々を不安に陥れているエボラ出血熱の流行だ。だが、図抜けて大きな経済的脅威は、欧州大陸から生じている。

 ドイツの成長が停滞した今、ユーロ圏は過去6年間で3度目の景気後退に入る瀬戸際にある。欧州中央銀行(ECB)のマリオ・ドラギ総裁が、単一通貨を守るために「どんなことでもする」と約束したことで猶予期間が生まれたが、各国首脳はその2年間を無駄にした。フランスとイタリアが構造改革を回避し続ける一方で、ドイツは過度な緊縮策を求めてきた。

 欧州の8カ国で物価が下落している。欧州全体のインフレ率は0.3%まで下がっており、恐らく来年は全面的に低下するだろう。世界の国内総生産(GDP)のほぼ5分の1を占める地域が経済停滞とデフレに向かって着々と進んでいる状況だ。

 欧州内外の楽観主義者は、しばしば日本の例を引き合いに出す。日本は1990年代後半にデフレに陥った。日本にとっても世界経済にとっても、その結果は快いものではなかったが、決定的な破滅をもたらすものでもなかった。

 だが、ユーロ圏の及ぼす危険は、それよりもはるかに大きい。日本のケースと違って、ユーロ圏は単独の事例ではない。中国でも米国でも、インフレ率は懸念されるほど低く、現在も低下し続けている。

 そして、我慢強く、均質性の高い社会を持つ日本とは違い、ユーロ圏の場合は、長年にわたる経済の硬化と物価の下落を一致団結して乗り切ることができない。イタリアやギリシャで債務負担が膨らめば、投資家は怯え、ポピュリスト的な政治家が勢力を伸ばし、比較的早い段階でユーロが崩壊するだろう。

すでに死に体

 多くのヨーロッパ人、特にドイツ人は、インフレを恐れるように育てられているが、デフレはインフレ以上に恐ろしいこともある。物価の下落が予想されれば、消費者や企業は支出を控える。そして、需要が縮小すれば、融資の債務不履行(デフォルト)が増加する。それは実際に世界大恐慌で起きたことで、1930年代はじめに、とりわけドイツに悲惨な結果をもたらした。

 したがって、中央銀行がインフレ目標を設定している46カ国のうち、30カ国がその目標を下回っているという現状は懸念すべき事態だ。価格の低下は、歓迎すべき場合もある。特に、石油価格の下落は、消費者の所得を押し上げてきた。

 だがそれ以上に、物価の下落と賃金の停滞は経済の弱い…
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