2014-10-26

冬物でクリーニングに出すものを探している最中にふと、奥のほうにつるされていたネクタイに気づいて、どうせならと一緒にクリーニング店に持って行った。

お店の人に、しみがありますがいいですかと聞かれて初めて汚れていることに気づいた。

よほど私の目が悪かったのか、真っ白なお店の光に、ネクタイ紫色の柄ににじむしみはよく見えた。

セロテープでしみをぺたぺたお店の人が張っていくと、自分が気づいていなかった箇所も含めて5箇所に...

困ったような顔をして、おずおずとお店の人が見積もりのレシートを差し出すと3人の博士が旅立つことがわかった。

感触からお店の人もわかったのだろうが、このネクタイシルクでもないしウールでもない安物の合成繊維、つまりノーブランドだ。

以前、ケチャップが飛んだPaul Smithネクタイクリーニングに出したときは迷いなく、2千円近く出したが、彼を手に入れたときを考えると気持ち上、問題なかった。

しかし、このネクタイクリーニング代で少なくとも2枚は買えそうで、お店の人の申し訳なさそうな雰囲気はよくわかったので、じゃあ、これは持ち帰りますとさっと流すことにした。

その他の衣装を出したり、受け取ったりして用事を済ませて、帰宅後、持ち帰ったネクタイを捨てようとしたところで、これが母からのもらい物だということが解った。

大昔、就活を始めた頃に、父から間に合わせで借りるつもりで締めた私のネクタイの柄がだらしなくベルトの下まで伸びていることに気づいた母が、

「あの人は特別(大きい人)だから自分のものを揃えなさい」とネクタイプレゼントしてくれた二組のうちの一つがそれだった。

今思えば化繊特有触感に、ネクタイらしいネクタイを締められたことに興奮していた自分は「すべすべする」と胸元からネクタイピンまでを撫で付けて悦に入っていたが、

「一枚ワンコインで購入したのよ、買い物うまいでしょう」とあの人はドヤ顔でぶち壊したことを今起きたようにありありと思い出した。そのときに感じた無償に腹立たしい気持ちも。

結局、就活を通して活躍したネクタイは、新卒で入ったネクタイ必要としない会社と、その次の必要とする会社とと転々とするうちにその存在を忘れられてしまったらしい。

私はもう一度クリーニング店に行くために思い腰を上げることにした。

からいただきものが私にとっては今や最高のブランドから

元嫁のというブランドもあるけど、彼女ブランド好きだったし値打ち物が好きだったから何も考えまい。考えずにいよう。

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