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カスガ

一九〇四年の『ロンドン・タイムズ』より抜粋

カスガ

2014年10月26日 22:08
▼『ザ・センチュリー・マガジン』1898年11月号に掲載されたマーク・トゥエインのSF短篇“From the 'London Times' of 1904”の拙訳です。

▼『ハックルベリー・フィン』や『トム・ソーヤー』の作者としてのトゥエインのイメージしかない読者は、「マーク・トゥエインがSFなんて書いてたの?」と驚かれるかもしれません。実はトゥエインは、今日の価値観では「SF」と呼べる作品を結構残しています。有名な『アーサー王宮廷のヤンキー』は言わずもがな、コレラ菌に姿を変えた主人公が人間の体内で暮らす『細菌ハックの冒険』、老船長が三十年間の宇宙での旅路の末に天国に辿り着く「ストームフィールド船長の天国訪問記抄」、学識ある者がより多くの投票権を持つ理想社会を描いたスケッチ「ゴンドールの奇妙な共和国」など、など。

▼この短篇には、自宅に居ながらにして世界中の景色を眺めたり、外国にいる人間と対話できる「テレクトロスコープ」という、今日のインターネットとWebブラウザを予言したような装置が出てきます。発表当時はまだ電話機は珍しく、テレビはその原理が発明されたばかりでした。その後、本作は綺羅星のごときトウェインの短篇群の中に埋もれて、21世紀までほぼ忘れられていました。2007年にカナダの作家クロフォード・キリアンが、「インターネットを最初に予言した小説」として本作を再評価するまでは。

▼なお、第三章は当時フランス軍部により引き起こされた冤罪事件である「ドレフュス事件」を当てこすった内容のものであり、トゥエインのペシミスティックな面が発揮された章であり、どちらかと言えば第二章までの読後感を損なう物なのですが、一応作品の一部でもあるので訳出しておきました。

▼原文は http://www.gutenberg.org/files/3251/3251-h/3251-h.htm#link2H_4_0009 にあったものを使用しました。

▼また、表紙絵のコラージュ素材として、WikimediaCommonsよりパブリックドメイン画像
http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Sholesglidden2.png
http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Science_and_Invention_Television_1928.jpg
http://commons.wikimedia.org/wiki/File:PSM_V70_D323_Wall_mounted_magneto_ringing_telephones.png
を使用させて頂きました。
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