倒産:円安関連が増加…前年同期比2.4倍 1〜9月
毎日新聞 2014年10月08日 21時01分(最終更新 10月09日 00時41分)
東京商工リサーチが8日発表した9月の全国の企業倒産件数(負債額1000万円以上)で、円安に伴う輸入原材料の価格高騰が原因とみられる倒産は28件と前年同月の2.8倍に上った。今年1〜9月の円安関連倒産の累計件数も214件と前年同期の2.4倍。東京商工リサーチは「最近のような急激な円安が続けば、原材料高を販売価格に転嫁しづらい中小企業の収益が圧迫され、経営に行き詰まる事例が増えかねない」と指摘している。
円安関連以外も含めた9月の全体の倒産件数は827件と9月としては昨年に次ぎ過去2番目に低い水準。負債総額は前年同月比28.0%減の1367億9900万円。2014年度上半期(4〜9月)の倒産件数も5049件と24年ぶりの低水準。公共事業などで支えられているためだが、円安が影を落としている。
10月初めに事業停止に追い込まれ、破産手続きの準備を進める栃木県の洋菓子メーカーは、輸入原料のチーズや砂糖などの価格上昇が重荷になった。9月に商品の値上げに踏み切ったが、円安の加速で仕入れ価格の上昇に歯止めがかからず赤字が累積。事業継続が困難になったという。売上高が5億円強(今年3月期)ある地元で有力なメーカーだ。
東京商工リサーチは、原油や原材料の価格高騰など円安が引き金となって倒産したとみられるケースを個別に集計している。件数は昨年初めまで月間で1桁台が続いたが、今年1月以降は月間で20〜30件台に増加した。
今年1〜9月の円安関連倒産の累計を業種別にみると、貨物運送など運輸業が81件と全体の37.9%を占め最多。ガソリン価格は夏場の天候不順による需要減などで下落が続いてはいるが、円安の影響で下落幅は限定的。全国平均価格は1リットル当たり166円台(レギュラー)と依然高止まりしており、運送費を直撃している。次いで製造業が44件(全体の20.6%)、卸売業が41件(同19.2%)など影響は幅広い業種に広がっている。
円安は輸出に有利に働くが、輸出が少ない中小企業の場合、円安に伴う輸入原材料価格や電気料金の上昇がコスト増となって収益が圧迫されており、円安はデメリットが大きい。8月以降の2カ月でドルに対して8円近く円安が進んだ今の局面では苦境がさらに強まっている可能性が高く、東京商工リサーチは「円安関連倒産はさらに増える」と見ている。【柳原美砂子】
【キーワード】倒産