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 集団的自衛権はどういう時に使えるのか。外務省と内閣法制局が、国会を舞台に再び牽制(けんせい)し合っている。安倍内閣は7月1日、集団的自衛権の行使を認めるよう憲法の解釈を変える閣議決定を行った。その過程では激しい攻防が繰り広げられた。いま、「日米同盟が揺らぐこと」が行使を認める「武力行使の新3要件」に当たるのか、という論点を皮切りに攻防の第2幕が始まった。

 10月16日の参院外交防衛委員会。民主党の小西洋之氏が、内閣法制局の横畠裕介長官に聞いた。

 【小西氏】 日米同盟が揺らぐ事態が起きるだけでは新3要件を満たさない。国民の生命等が根底から覆される危機が発生しなければ武力行使はできない。

 【横畠氏】 単に日米同盟が揺らぐ恐れがあることが、直ちに(新3要件に)当たるとは考えられない。

 小西氏は、横畠氏の答弁を引き出すと、岸田文雄外相に同じ質問をぶつけた。岸田氏が「法制局長官のお答えした通り」と答えると、小西氏は「これまでの外相の答弁を根底から覆すものだ」とたたみかけた。

 「日米同盟の揺らぎ」が論点になるのには伏線があった。閣議決定から2週間後の7月14日、国会閉会中に開かれた衆院予算委員会でのやりとりだった。

 【岸田氏】 日米同盟は日本の平和と安定を維持するうえで死活的に重要だ。米国への攻撃は新3要件に該当する可能性は高い。

 【岡田克也氏】(民主) 日米同盟が危なくなる場合は常に(集団的自衛権を)行使できる。新3要件の言葉は、何の限定もないことに等しい。

 外務省が作った答弁要領を読む岸田氏に、内閣法制局は危機感を抱いた。

 閣議決定では、他国に対する攻撃でも、国民の権利などを「根底から覆される明白な危険」があれば、集団的自衛権を行使できるようにした。野党からは、その表現が「あいまいだ」と批判を受けている。ところが、岸田氏のこの発言は「日米同盟が揺らぐ」という、さらにあいまいな事態でも新3要件に当てはまる恐れがあるものだった。