御嶽山噴火:気象庁「警戒レベル1維持」検討重ねた裏側
毎日新聞 2014年10月06日 06時30分(最終更新 10月07日 09時23分)
戦後最大の火山災害となった御嶽山(おんたけさん)の噴火は、気象庁が警戒レベル1(平常)と判断する中で起きた。噴火後、「レベルを引き上げておくべきだった」との批判も出ているが、気象庁は2週間以上前から火山性地震などの兆候に注目して自治体に情報提供し、専門家と検討を重ねていた。レベルを上げる機会を逸したまま噴火に至った経緯からは、データの蓄積が乏しい中で判断せざるを得ない噴火予知の難しさが浮かぶ。
御嶽山に変化が表れたのは、噴火17日前の9月10日。前日は10回だった火山性地震が52回に急増した。50回を超えたのは2007年1月以来で、この時は2カ月後にごく小さな水蒸気噴火が起きている。気象庁は翌11日午前に「火山の状況に関する解説情報」を出し、地元の長野、岐阜両県と4市町村にメールした。解説情報は、警戒レベルを上げるほどではない火山活動の変化を知らせるものだ。御嶽山で出すのは初めてだったため、念のため電話でも伝えたという。
火山性地震は11日も85回とさらに増えた。気象庁は、5段階で定められている噴火警戒レベルを1から2に上げ、火口周辺1キロの立ち入りを規制すべきかを検討した。07年の噴火時は約3カ月前から、小さく長い揺れが続く火山性微動と地下のわずかな膨らみが確認されていた。火山性地震の回数も1日最大164回と今回よりも多かった。こうした点から、気象庁は「様子見の段階」と結論付けた。菅野智之・火山活動評価解析官は「レベル2を視野に入れていたが、火山性微動や地殻変動がなく、地震も減少傾向にあったので(上げる)判断には至らなかった」と振り返る。
これと並行して、気象庁は、御嶽山の観測を長年続けている名古屋大地震火山研究センターに意見を求めた。11日、データとともに「何かあればご意見をください」と書かれたメールを受け取った山岡耕春(こうしゅん)教授(地震・火山学)は「低周波地震が起きたら要注意、火山性微動が起きれば噴火でしょう」と返信した。浅い地下で水などが動いて起きる低周波地震は水蒸気噴火の前に増える傾向があり、07年噴火の前にも起きたからだ。