優秀な人材の流出に悩むIT(情報技術)業界にあって、ソフトウエア開発のサイボウズは離職率を大きく下げることに成功した。決め手は会社を去っても門を開いて待っている制度の導入だ。辞める人が増えそうな制度だが、実際は社員の定着につながった。あえて辞めやすい仕組みを設ける経営判断はどこから生まれたのか。
■再入社組にパスポート発行
「青年海外協力隊としてボツワナでボランティアがしたいので辞めさせてください」。入社4年目の長山悦子が人事部に退社を申し入れてきたのは、2012年のことだった。事前の準備期間も含めて3~4年が必要だが、日本ではボランティア経験はキャリアとして見なされにくく、戻れば職探しが待っている。「仕事は好きなので帰ってきたらまた働かせてください」。長山の決断をきっかけに誕生したのが、「育自分休暇制度」だ。
サイボウズでは「誰かのリクエストに応えて作られた人事制度が多い」(人事部マネジャーの松川隆)。育自分休暇制度を使えば、退職した人が最長6年たっても会社に復帰できる。12年に制度ができて5人が利用したが、その理由は様々。海外にボランティアに渡った長山のほか、IT系の他社やコンサルティング会社に転職した人やフリーランスとして独立した人、寿退社して夫の赴任先について行く人など、その後の足取りは多岐にわたる。
サイボウズは情報共有ソフトの開発などを手掛ける。1997年の設立から順調に事業を拡大してきたが、長時間勤務でストレスがたまりやすいといわれるシステムエンジニア(SE)などの職種を抱え、05年には離職率が27.7%に達した。ただ11~12年ごろにかけて、他社に転職した社員が復帰したいと申し入れてくることが増えてきた。「出戻りのような形で気まずく迎えるより、ユニークな名前の制度で受け入れやすくしたいという思いもあった」(松川)。長山の申し入れが制度の導入へ会社の背中を押した。
制度を使った退職者には写真入りの「再入社パスポート」が手渡される。手続き上は特に必要ないが、「冗談も兼ねて」(松川)作成した。戻ってきた社員は社長を前に退職期間中の自己成長をアピールする。その成長ぶりを見て、復帰後の待遇やポジションを決める仕組みだ。
同制度の対象者は35歳以下。特に経験や勉強によるインプットが重要な時期と考えるためだ。復帰できるのは退職から6年までということになっているが「6年以上になっても検討して受け入れると思う」(松川)という。もともとサイボウズは人事制度策定の軸に「合理性、メッセージ性、わびさび」の3つを掲げる。10%分の重みを置く「わびさび」は、人情を重んじて柔軟に制度運用する姿勢を示している。
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