東京電力:原発ゼロでも増益 夏の低温、コスト圧縮
毎日新聞 2014年10月26日 08時42分(最終更新 10月26日 11時43分)
東京電力が、柏崎刈羽原発(新潟県、出力821万キロワット)の再稼働なしで2015年3月期に経常黒字を確保する見通しとなったのは、年間5800億円規模のコスト削減努力に加え、夏場の電力需要が伸びず、コストの高い石油火力の稼働が減ったためだ。【中井正裕】
◇再値上げ反発必至
柏崎刈羽原発の停止が長期化する中、東電は、液化天然ガス(LNG)火力の出力向上と高効率化を加速。さらに7日に発表した中部電力との提携で、LNGの共同調達と、老朽火力発電の建て替えを進め、燃料費と発電コストを大幅に引き下げる方針も決めた。今年4月に就任した数土文夫会長(前JFEホールディングス社長)主導で進められているコスト削減策の成果が上がりつつある。
ただ、巨額黒字は、夏場の天候や原油価格の下落など経営努力以外の要素にも支えられている。もし、猛暑に見舞われたり、原油が高かったりしたら、黒字も危うかった。
東電の新総合特別事業計画(再建計画)の前提は、今年7月に柏崎刈羽原発を再稼働させ、発電コストを引き下げることだった。だが、原子力規制委員会の安全審査に時間がかかっているほか、地元自治体の反対の声も根強く、実現しなかった。
16年の電力小売りの全面自由化で、東電が独占している首都圏の家庭向け市場の競争激化も必至。地域独占に守られていた時代より、利益を上げるのは難しくなる。
東電は15〜16年度に計1兆3000億円の資金調達をしなくてはならない。銀行から借りるにしても、社債を買ってもらうにしても経営努力を示す必要がある。そのため、外部有識者の知恵を借りたコスト削減の徹底とともに、来年7月にも柏崎刈羽原発の再稼働にこぎつけたい考え。12月時点で再稼働が見通せなかった場合、電気料金の値上げが必要かを判断する方針だ。
一方で東電は、12年9月に家庭向けで平均8.46%の料金値上げを実施済み。黒字の東電が再値上げに踏み切れば、負担増に直撃される企業や一般家庭からの反発は避けられない。「原発ゼロでも黒字」を実現したことで、再稼働への反対論が強まる可能性もある。
東電は福島原発事故の賠償費用を国から借りているが、最終(当期)利益から返しており、経常損益には直接反映されない。