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R18エセ催眠術師 作者:天馬 龍星

催眠術 その3

「ふぅ…間に合った」
 ショートホームルームまであと数分。教室に入ると、すでに席はほんど埋まっていた。
 俺は教室の窓際。少し後ろのほう席へ目を向ける。
 姫城ひめぎ姫子ひめこは、クラスの……いや、学園でもトップクラスの美少女だ。
 窓の外に目を向け、こちらおに一切、興味なんてないーーとおうような顔をしている。
 さっき千春にフェラをさせていた時、俺たちをのぞき見していたのは彼女だろう。だが、騒ぎ立てるわけでもなく、何か言うつもりもなさそうだ。
 もともと自分の見た目を利用し、取っ替え引っ替え男と付き合っているビッチだという噂がある。あの程度のことは、驚くことではないということか。
 千春を完全な形で俺のモノにしてから、二週間。たっぷりとそのすべてを楽しませてもらっている。
 とはいえーーそろそろ次の獲物を考えてもいい時期だ。
 千春の妄想オナニーの相手。千春が固執し、千春との行為を見られた姫城ひめぎを口封じを兼ねて次のターゲットにしてもいいんだが……問題は、どうやって二人きりになるかだな。
 しかない。一手間かかるが、千春に協力させて二人きりに――――いや、ただ二人きりになるだけじゃ、つまらないな。
 ついでだ。何か、ちょっとした仕掛けを施しておくか。
 携帯を取り出し、千春に『適当な理由をつけて授業を抜けだし、 姫城の水筒に薬液を入れておけ』という内容のメールを送る。
 あとは千春が上手くやるだろう。

 薬の効果が現れるのは、早くても昼休みのあとになるはずだ。そのときは、すぐに対応できるようにしないと、俺にとって不都合な存在となりえるからな。
 チャンスは絶対に見逃せない。
 姫城のその後の様子をうかがうためにも、俺は急ぎ廊下の物陰に隠れた。
 そうこうするうちに昼休みも終わり、午後の授業が始まった。しんと静まり返った廊下に姫城が出てきたのは、授業開始から10分ほどしてからだった。
「すみません……。それでは、今日はこれで……、失礼します……」
 そう告げて教室の扉を閉めた姫城は、手に鞄を持ち、妙にフラフラとした足取りで廊下を歩き出す。どうやら早退するつもりのようだ。
「あれ? 姫城さん、どうしたの? 顔色が悪いみたいだけど」
 姫城が階段にさしかかった時、俺は思い切って声をかけた。
「あなたがどうしてここにいるのよ。催眠くん?」
「どうしてって、俺も風っぽいから、早退するところで……」
「そ、そうなんだ。お大事に」
 なんとも辛そうな顔で姫城が会釈えしゃくしてくるがっ! その間にも、足元はますます怪しくなっている。息は荒くなり、震えが全身に広がっていく。
 すべては計画通りである。薬の効果が現れてきていることを確信した俺は、小さくニヤリと笑みを浮かべて、姫城に歩みよる。
「姫城さん、ひとりで帰れそう? なんだか、フラフラしているけど? 大丈夫。もし良かったら、俺が送って……」
「そんな……悪いよ……。迷惑かけちゃう……。それに。私、あなたのこと……」
「気にしなくてもいいよ」
 軽い口調でそう言いながら、俺を睨みつけてくる姫城の視線を正面から受け止めながら、催眠術をかけていく。
「困ったときはお互い様だし」
 最初のころよりも経験を経験を積んだ。今の俺はほぼ一度の力で、催眠へち落とせるはずだ。
「……姫城。俺の質問にはすぐに、ちゃんと答えるんだ、わかったか?」
「はい」
「姫城……きみは催眠術にかけてもらうのが好きだ。大好きだっ! 催眠状態のときは、すごく気持ちがいい……そうだな?」
「好き……大好き……催眠術……かかるの……気持ちいい……」
「そうだ。だから、これから数えるキーワードで、きみはすぐに今と同じ状態になる。わかったか?」
 毎回催眠術をかけるのは、負担が大きいし、リスクも高い。なによりも非効率だ。だから簡単に催眠状態へ導入できるように、キーワードを埋め込む。
「いいか。キーワードは『いれどのまさるけかはぎめひ』だ。俺が言った時だけ、効果があるわかったら、キーワードを繰り返して言うんだ」
「キーワード、いれどのまさるけかはぎめひ」
 さてこれで準備は完璧だ。
「姫城。いいか、三つ数えたら、きみは普段のきみに戻る。ただし身体は動かないし、大きな声も出せない。姫城にできることは、俺の命令に従うことだけだ。わかったか?」
「ん……わかった。三つ数えたら、いつもの私に……戻る……身体、命令されなければ、動かない……」
「それじゃ、三つ数えるぞ。3、2、1、よし! 元に戻れ」
 その声ともに、姫城の瞳は徐々にそのピントを取り戻していって、そしてーー。
「あれ、どうして、身体が動かないの」
「催眠術でキミの身体の自由なら、奪っておいた。俺の命令がない限り、うごけくことはできね~よ。バカ女」
「な、なによそれ……んっ、く……な、なんで……や、やめなさいよっ、今すぐ、これ、解きなさいよっ」
「いいのか? そんな強気な態度で?」
「あんたこそ、こんなことして、ただで済むと思っているの?」
「思っているさ。そのことを、証明してやるよ」
「スカートを自分でまくって、パンツを見せろ。いやらしく腰を突き出しながらな」
「なにを言ってーーーーえ?」
 俺の命令通り、姫城はスカートの裾を掴み、ためらいなく腰まで持ち上げた。
「い……いやっ、いやぁっ!! なんで、どうして……こんな、み、見ないでっ!」
 自分の意志を無視して身体を操られ、催眠術の力を実感したのだろう。姫城の顔から血の気が一気に引いていく。
「さて、これで催眠術の力は理解してもらえたかな? 俺は寛大かんだいな男だからな、キミにチャンスをやろう」 
「……チャンス?」
「ああ、俺のことを好きになってもらう」
「無理、絶対ムリ。こんな酷いことをする人を、好きになるわけないでしょ。だいたい男なんて……嫌い……好きになって……ならない」
「なるさ。きみがどんなに否定しようとね。『いれどのまさるけかはぎめひ』」
 キーワードをつぶやくと姫城が再び脱力し、焦点を失った瞳を見て俺は確信する。間違いなく催眠状態になっていると。
「いいか、俺が今から10数える。きみはどんどん深いところへ降りていく。降りるたびに気持ち良くなる。そして自分の心が丸裸になっていく。なにも隠さない、何も飾らない。本当のきみに自身になるんだ」
「ほんとうの、私……になる……。きもちいいこと……はい」
 今にも倒れそうなほど全身から力が抜け、瞳からは完全に意志の光が消えている。これで完全に隠し事はできないはずだ。もちろん嘘をつくこともできない。
「今から質問することに、ちゃんと答えると気持ち良くなる。ただし嘘をついたら全身に激痛が走る。わかったな?」
「はい……ちゃんと、ほんとうの、ことをいいます」
「よし。それじゃ……キミは本当に一度も、男と付き合ったことがないんだな」
「はい……一度もありません。未経験です」
 返答と同時に、ほんのりと頬に朱が差し、表情を緩ませ、甘い吐息を漏らす。気持ち良さそうにしてるってことは……本当なのか?
「つまり、きみはまだ処女というか?」
「はい……私は、まだ処女です。ですから、ペッティングやキスもしたことがありません」
 うそ、だろ……ビッチじゃなかったのか? でも……なぜだ? 姫城ならどんな相手でも選びたい放題だろうに。
「……理由を言え。誰ともそういうことをしない、したくない理由だ」
 わずかなしゅんじゅんの後、姫城はゆっくりと話しだした。
「お父さんが……浮気して……なんにんも、しらない女のひとが。いえに……おかあさんも、おとうさん以外男の人と……いやらしいこと、してるの見て……気持ちわるい……私、あんなこと、したくない……あんなふうに……なりたくない……。えっちなこと……汚い……男なんて……不潔……嫌い、大嫌い……私は、一人で……誰にも頼らない……」
 なるほどま。両親の不貞行為を見て、性的なことへの忌避感が強いってわけか。
「理由はわかった。だが俺は『特別』だ。俺は『違う』。きみが『唯一』頼っていい相手だ。だからなにをしても『不潔』だなんてことはない。えっちなことに全く興味がないというわけじゃないだろう」
 姫城は頬をうっすらと染め、唇をきゅっと引き結んだ。
「なあ、姫城。オナニーぐらいしたことあるんだろう」
「……ない」
 てっきりビッチの中古品だと思っていたけど、そんなことはなかった。意外な掘り出し物だ。
「今から催眠を得、ただし今日、話したことは全部忘れ、俺に対する嫌悪感もなくなっている。いいな」
 そう命令してから催眠を解除すると、姫城の瞳に意志の光が戻る。
「あ、あれ?」
 突然、姫城がハッとしたように声を漏らした。
 驚いたように廊下を見回した後、首を傾げながら俺の顔を見つめてくる。
「やっぱり体調がわるいんじゃないの?」
 そう言いながら俺は、姫城の身体を支えるようにして、一緒に階段をおりていた。校門を出る頃には、姫城の全身は汗で湿っていて、息もことさらに荒くなっていた。
「はぅうっ。はっ、はぁ……。ごめんね、迷惑かけちゃって……」
 半ば引きずられるように、俺は姫城を家へと連れ込んだ。そこは広い洋間で、基本的なレイアウトは俺の部屋と同じもの、催罠家にいくつもある来客用寝室のひとつだ。
「はぁ、はぁっ。め、迷惑かけちゃって、ごめんなさい……。でも、私……ほんとうに、やすまいと……、あ……、あううっ。だめそう……」
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