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米財務長官が麻生財務大臣にダメ出し!?

2014年10月26日(日) ドクターZ
週刊現代
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アメリカ財務長官のジャック・ルー氏---〔PHOTO〕gettyimages

米財務長官のジャック・ルー氏の発言が、ちょっとした話題になっている。

「強いドルは米国にとっていいことだ」

ルー財務長官は、講演でそう語ったという。

実際、ここのところの動きをみると、米国が「強いドル」を許容しているように映るのだが、実はこのルー財務長官が、現在の日本経済にとって頼もしい「味方」となる可能性がある。その理由をご説明しよう。

日本ではこれまで日本銀行が金融引き締めを行ってきたので、世界の通貨に比べて円の流通量が少なくなり、その「希少性」によって円高になっていた。円高傾向は、安倍政権誕生以降の日銀の政策転換=金融緩和で少し是正されてきたが、それでも現在の水準はやっとリーマン・ショック前に戻ったくらいである。

日本経済は円安のほうが調子がよくなる。円安になれば輸出が増えるか、輸出が増えなくても円建てでの海外投資収益は増える。どちらにしても輸出関連企業としては恵みの雨となるからだ。

ここで世界に目を転じると、隣国・韓国の朴槿恵大統領などが、国内企業の業績が苦しいので異例の円安批判を行っている。そうした国際情勢にあって、ドル高=円安を容認してくれるルー財務長官の発言は頼もしいといえる。

加えて、ルー財務長官が日本の緊縮財政について、「考え直したほうがいい」と言っている点にも注目したい。

米財務長官の日本側のカウンターパートは財務大臣である。その財務大臣である麻生太郎氏は、現在、消費増税の意欲を露骨に見せている。麻生財務大臣は、増税しないと国債金利が暴騰すると言い、増税は「国際公約だから」と必死で財務省事務方の意向を代弁している。

しかし、言うまでもなく、消費増税=財政緊縮である。となれば、ルー財務長官の発言はカウンターパートである麻生財務大臣への強烈な一発ともいえる。あるいは、麻生大臣の一連の発言がデタラメだと言っているようにも映るのである。

気になるのは、どうしてルー財務長官がこうした発言をしているのか、である。

米国の大きな政治課題は11月に予定されている中間選挙である。今のところの政治情勢は、野党である共和党が優勢になっている。米国経済は、FRB(連邦準備制度理事会)の金融緩和で景気が持ち直し、失業率も低下しているので、今のオバマ政権は有利のはずだが、選挙情勢では劣勢となっているわけだ。

現在、下院はすでに共和党が多数であるが、このままではさらに議席を伸ばすだろうことが容易に想像がつく。上院は民主党が議席で上回っているが、そちらも共和党が多数になるかどうかがポイントという状況である。

ルー財務長官の発言を、そうした背景で考えると、日本経済を支援して、TPP(環太平洋経済連携協定)交渉で米国優位にしたいのだろうとの思惑が見えてくる。米国では、労働界の意向に左右される民主党より、共和党のほうがTPP交渉をうまくできるという意見がある。こうした意見に対抗するために、日本経済を強化して、日本から譲歩を引き出すという目論見なのだ。

ルー財務長官といえば、ルービン、ポールソン、ガイトナーと続いてきたウォール街からの大物でなく、どちらかといえば地味な人物だった。ただ、ルー財務長官も「政治家」なのだ。ドル高容認も「政治発言」なので、すぐ変わるかもしれない点には注意が必要だ。

『週刊現代』2014年11月1日号より

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