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 大阪・道頓堀の戎(えびす)橋で、客引きの姿がめっきり減った。あらゆる客引きを禁じる大阪市の厳しい条例が施行されたためだ。27日からは罰則も適用される。違反した場合に名前を公表されることを恐れ、学生バイトが次々に辞めたことも影響しているという。

■学生ら、就活への影響懸念

 24日午後8時過ぎ、大阪・ミナミの道頓堀川に架かる「戎橋」に客引きの姿はまばらだった。「ここは駄目やからね」。大阪市の指導員が橋の上に立つ女性に声をかけた。飲食店のメニューを袖口で隠していた。橋の脇にも居酒屋の客引きが数人いたが、指導員の様子をうかがうばかり。

 以前は居酒屋やガールズバーの客引きでひしめいていた。大阪市の昨年2月の調査では、同時刻に約60人の客引きが戎橋にいた。大阪市区政支援室の地域安全担当者によると、10月に入ってから激減したという。

 大阪市の「客引き適正化条例」は6月に施行され、10月から罰則規定も施行された。大阪府警も取り締まりを強化。府警OBの指導員10人がキタとミナミの繁華街を巡回する。27日からは罰則の対象となる「禁止区域」が指定され、キタとミナミで適用が始まる。

 地元商店街の警備員も「客引きは半減している」という。市の指導員がいなくなった午後9時半~10時の間に戎橋の客引きを毎日数えている。9月は平均60人近くにのぼり、90人を超える日もあったが、10月は平均30人まで減った。

 新条例では、5万円以下の過料という罰則だけでなく、客引きの名前が大阪市公報とホームページで公表されることがある。

 ミナミの飲食店から客引きを請け負っている飲食会社の役員の男性(53)は、「客引きのメンバーがそろわない」と頭を悩ませる。理由は、名前をさらされることを恐れての「なり手不足」だ。客引きの多くは大学生のアルバイト。「これで就職できなくなるのではと、9月から次々辞めていった」とこぼす。

 大阪市の担当者によると、昼間は就職活動、夜は客引きという大学生もいた。名前の公表は「制裁的な意味がある」と明かす。