御嶽山(長野・岐阜県境、3067メートル)の救助・捜索活動で、県警の現場責任者の1人だった金森勉・機動隊副隊長(54)が25日までに信濃毎日新聞の取材に応じ、噴火当日の9月27日夕に8合目近くまで到達し、夜間まで下山した人の誘導に当たったことを明らかにした。金森副隊長は「また噴火するかもしれないという恐怖があった」と話し、火山特有の刺激臭もしたが「当時は火山ガスの怖さをほとんど知らなかった」とも明かした。来春以降に再開予定の捜索については「経験を生かし、必ず行方不明者を見つけたい」と強調した。
長野市松代町の機動隊舎で噴火の一報を受け、木曽郡王滝村の田の原登山口に着いたのは27日午後5時ごろ。山頂近くの山小屋からけがをした人たちが下山するとの無線連絡を受け、機動隊員10人と消防隊員数人で入山した。
途中で軽傷の2人を見つけ、隊員の付き添いで下山させた。2人が「後から人が来る」と話したため、日没で暗くなり始めていたが先に進んだという。
8合目付近に着いた時は午後7時をすぎており、ヘッドランプを頼りに下山してきた登山者1人と合流。暗闇の中で遮るもののない山頂を見上げると、もうもうと上がる灰色の噴煙が判別できて恐怖を感じたという。その後は登山者を確認できず、下山した。
8合目付近では刺激臭を少し感じたが、当時は有毒な火山ガスについて詳しくなかったといい、「目の前の登山者の救助に必死だった」と振り返った。県は27日午後に自衛隊に救助を要請したが、有毒ガス発生の恐れから同日の救助は断念していた。
ガス検知器などを備えた自衛隊や緊急消防援助隊が到着した28日、救助活動が本格化。金森副隊長らは、生存者6人が避難しているとの情報を基に9・5合目の王滝頂上山荘に向かった。中にいた6人は布団の中でぐったりしており、噴石の直撃を受けたとみられるけがで5人は歩けない状態だったが、「みんな救助隊員を見てほっとした様子だった」という。
来春以降に再開する予定の行方不明者6人の捜索について、県は自衛隊への派遣要請はしない方針を示しており、県警と県内消防が担うことになる。金森副隊長は「自衛隊ヘリコプターは使えず、徒歩で登る。装備は重く、ぬかるむ火山灰もあり、これまで以上に体力が求められる」と予想している。
行方不明者の家族らを対象に、10月2日に木曽署で開いた捜索状況の説明会で、家族らは現場の映像を写真に収めたり、盛んに質問したりしたという。金森副隊長は「家族の気持ちを背負って捜す、とあらためて隊員に伝えた」とし、「(捜索隊の)規模は小さくなるがしっかり準備をし、何としても行方不明者を見つけ出したい」と力を込めた。