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立ち上がりつながるマイノリティ女性

マイノリティに属する女性は、マイノリティであり女性であることで複合的な差別を被っています。しかしそのことは長い間見過ごされてきました。そのため、IMADRでは、差別と人種主義の撤廃をめざす活動を行なう際に、ジェンダーの視点を大切にし、マイノリティの女性たちの立ち上がりやつながりによって、女性たちが抱える課題の解決につながる取り組みを行なっています(インド、ネパール、スリランカ、ナイジェリアなどにて)。日本では、先住民族アイヌ・被差別部落・在日朝鮮人・沖縄の女性たちが、これまで共通する課題への取り組みを通じて、ゆるやかなネットワークを築いています。

 

マイノリティ女性をとりまく日本の現状

身分制度・先住民族同化政策・植民地主義の歴史は学校では十分教えられず、多くの人がその現在へのつながりを知らないのが現状です。また、特にその集団に属する女性がどういう問題に直面しているのかは認識されていません。歴史的・社会的な要因によって不利益を被ってきたマイノリティの女性にどういう政策が必要かを明らかにするために、諸外国ではマイノリティの女性に関するデータ・統計をとり、それをもとに政策が立案されています。しかし日本では、そのような政策の必要性が認識されておらず、女性政策や人権政策の中に含まれず、アイヌ・部落・在日朝鮮人女性の女性たちに関する政府統計は存在していません。

 

国連の女性差別撤廃委員会から日本に度重なる勧告

女性差別撤廃委員会日本審査日本は、世界の女性の憲法といわれる女性差別撤廃条約を批准しています。同条約の実施状況を審査する同委員会による日本審査が2009年に行われ、アイヌ・部落・在日朝鮮人・琉球・移住者の女性も傍聴しました。審査に先立ち、国連本部の会議場で、お昼休みに委員に自分たちの現状と課題を訴え、委員への働きかけを行ないました。その結果、審査ではマイノリティ女性に対する複合差別が重要課題として指摘されました。そして、委員会から日本政府に対して、マイノリティ女性に関する具体的な政策枠組みをつくり、効果的な取り組みを行なうこと、包括的な調査を行なうこと、などが以下の通り勧告されました。しかし、現在に至るまでそれらは実現には至っていません。

 

女性差別撤廃委員会から日本政府への勧告(2009)
マイノリティ女性

51. 委員会は、社会全体及びコミュニティ内において、締約国のマイノリティ女性は性別や民族的出自に基づく複合差別に苦しんでおり、こうした状況について情報や統計データが不十分であることを遺憾に思う。委員会はさらに、マイノリティ女性の権利推進を図るために、各マイノリティ・グループに対する政策的枠組を含む積極的な施策が策定されていないことは遺憾である。
52. 委員会は、マイノリティ女性に対する差別を撤廃するため、政策的枠組の策定及び暫定的特別措置の導入を含む有効な措置を講じるよう締約国に要請する。委員会は、このためにこうした観点から、マイノリティ女性の代表を意思決定主体の一員として指名することを締約国に要請する。委員会は、日本におけるマイノリティ女性の状況に関する情報、特に教育、雇用、健康、社会福祉、暴力被害に関する情報を、次回報告に盛り込むことを求めた前回の要請(A/58/38、パラ366)を改めて表明する。この観点から、委員会は、アイヌの人々、同和地区の人々、在日韓国・朝鮮人、沖縄女性を含むマイノリティ女性の現状に関する包括的な調査を実施するよう締約国に求める。

 

委員に働きかける女性たち委員に訴える

 

マイノリティ女性の視点から審査を活用したその軌跡をまとめ、複合差別に関する国際的重要文書を収録した書籍はこちらです。⇒『マイノリティ女性の視点を政策に!社会に!女性差別撤廃委員会日本報告書審査を通して』

 

 

自分たちでアンケート調査を実施

女性差別撤廃委員会から勧告を導き出したアイヌ女性、部落女性、在日朝鮮人女性が、「政府がやらないのであれば、自分たちで!」と立ち上がり、2004年から2005年にかけて自分たちの手でアンケート調査を実施しました。3つの主体が教育、仕事、社会福祉、健康、暴力の分野で共通設問を設定した、はじめての調査でした。設問作成の過程で様々な議論と経験共有を行ない、お互いに学びあい信頼を深めました。また調査に参加した女性たちは、自分たちの経験を言葉にし、数値として表現する事で様々な気づきを得て、それが次の取り組みにつながりました。部落解放同盟の女性部は、その後、6つの地域で独自の調査を行ない、課題を明確にしています。

 

アンケート調査に取り組んできた女性たちの思いと調査の意義や結果など、詳細を記した書籍はこちらです。⇒『立ち上がりつながるマイノリティ女性』言葉と数字にしてつむぎだされた協働の結晶は、日本の社会のあり様を示しています。

 

アンケート調査報告会の模様アプロ報告会

 

日本にマイノリティ女性に関する施策を:政府への要請活動

日本の行政施策の中にはマイノリティ女性に関する記述や施策がなく、要請を行なう政府窓口もありませんでした。アンケート調査を行ない、その結果を見える形にし、提言を作成したことで、2007年9月に7つの省庁に対し政府交渉を行なうことができました。同年、男女共同参画大臣にも申し入れ、また度重なる意見提出も行ない、2010年末に策定された男女共同参画第3次基本計画の中にはじめて「アイヌ」、「同和問題など」との記述がなされました。しかし、具体的な施策は書かれていないため、まずは、DV相談員へのマイノリティ女性に関する研修の実施(相談による2次被害の防止のため)、機能的非識字に対する学習支援、マイノリティの文化の尊重と促進等の要請を行なっています。これらの課題を実現していくためには、より大きな声が必要です。マイノリティ女性の声に触れ、「これは何とかしなければ」と思う人が増え、女性たちの声に連なる人が増えていくことを願っています。

提言を携えての政府交渉政府交渉

 

マイノリティ女性フォーラムの開催

マイノリティ女性フォーラム共同の調査や政府への働きかけを通じて、女性たちは多くの出会いと発見を重ね、改めてお互いの課題を共有し語り合うことが重要だと感じました。そんな思いから、第1回マイノリティ女性フォーラムを2007年10月に札幌で開催しました。全国から集った100名の女性たちのパワーに溢れる集いとなり、第2回を2009年に大阪で、第3回を2012年に沖縄で開催しました。今後、さらにネットワークの裾野を広げながら、様々な女性運動団体とも連携したフォーラムを開催したいと希望しています。

 

反差別の国際連帯

立ち上がりつながるマイノリティの女性たちは、海外で差別と闘うマイノリティ女性とも経験交流を行なっています。これまでの取り組みについては、部落・ダリットの国際連帯の頁の他、資料室をご覧ください。

ネパール女性との交流インドのダリット女性がワークショップで熱唱

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