トヨタ自動車は、継続して購入する部品の価格について、2014年度下半期は値下げを求めない異例の方針を決め、部品メーカーに伝えた。トヨタ本体の業績は絶好調だが、下請けには円安による材料費の高騰などで経営が厳しいメーカーも多い。価格据え置きでもうけが下請け全体に行き渡るようにする狙いだ。

 半年に一度の部品メーカーとの価格交渉では、トヨタが値下げを求め、部品メーカー側も受け入れるのが通例。徹底して無駄を省く「カイゼン」を続ければコストを下げられるとの考えからだ。トヨタは当初、14年10月~15年3月に購入する部品について、1%弱の値下げを求める方針を部品メーカーに伝えていたが、これを撤回した。

 トヨタは15年3月期の営業利益が過去最高の2・3兆円になると予想。最近の円安進行で利益はさらに膨らむ見込みだ。一方、輸出が少ない中小の部品メーカーには、円安で材料の価格が上がってもうけが減る社もあり、「トヨタ本体だけがもうけ過ぎ」との声が出ていることに配慮する。

 トヨタは今回の値下げ要請見送りに際し、部品メーカーに対し、取引先について円安によるコスト上昇分の面倒をみるよう求めている。狙い通り末端の下請けまで広がれば、春闘で賃上げを認める余力がある企業が増える可能性もある。