政府は10日、国際テロリストが日本国内で金融取引などをすることを規制し、財産の凍結を可能にする新たな法案を閣議決定した。国際社会と協調して、テロと戦う姿勢を打ち出すのが狙い。金融機関による顧客管理を厳格化し、マネーロンダリング(資金洗浄)対策を強化する犯罪収益移転防止法の改正案も閣議決定した。いずれも臨時国会に提出する。
日本のテロ資金やマネロン対策を巡っては、各国の対策を評価する国際組織、金融活動作業部会(FATF)が6月、日本の法整備が不十分として名指しで批判。高いリスクがあるグレーリスト(アフガニスタンやイラクなど22カ国)に入れられる可能性があったため対応を急いでいた。
国際テロリスト財産凍結法案は国連安全保障理事会が「国際テロリスト」と指定した人物の国内取引を規制。有価証券や不動産を売買したり、金銭の贈与を受けたりする場合、都道府県公安委員会の許可が必要となる。
テロリストの財産が日本国内に一定以上ある場合、都道府県公安委が一時的に管理できる条項も盛り込んだ。
相手がテロリストと知りながら、取引をした個人や団体には都道府県公安委が行政命令を出し、違反を重ねると1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる。
犯罪収益移転防止法改正案は金融機関などに対し、口座開設や送金などの取引ごとにマネロンの疑いがあるかどうか判断し、国に届け出ることを義務付けた。国家公安委員会が毎年「危険度調査書」を作成し、疑わしい取引の判断材料とする。
FATFの要請を受けた日本のテロ・マネロン対策では、テロリストへの物品などの提供を禁ずるテロ資金提供処罰法改正案が継続審議中。重大犯罪を計画した段階で処罰対象とする共謀罪の創設は見送られている。
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