公立図書館での電子書籍の導入が少しずつ進んでいます。現在のところ、多くの図書館では、紙の本を扱う図書館システムとは別にシステムが運用されており、本を紐付けるISBNなどの書誌情報の整備も進んでいないため、検索しにくい状況でした。
カーリルでは、これらのデータを独自に集約し、使いやすい形のデータを整備する取り組みを開始しました。また、このデータを活用した電子書籍サービスとの連携を開始しました。
ユーザーは、これまでとまったく同じ使い方でご利用いただくことができ、該当する本が電子書籍として所蔵されている場合は、「蔵書あり」と表示されます。「予約する」ボタンから電子書籍サービスに簡単にアクセスすることができます。
今回の連携では、ISBNがある本の電子版のみの対応となりますが、今後ISBNのない本についても対応方法を検討していきます。
↑ 電子書籍が該当した場合の表示例
また、カーリルの提供している図書館APIも標準で対応するため、500を超えるカーリルAPI連携アプリやブラウザ拡張ツールも電子書籍に対応することとなります。
現在電子書籍を提供している図書館は29館といわれていますが、現在は、そのうちの22館に対応しています。今後は対応図書館の拡大を目指すとともに、より低コストに情報の流通性を高める方法について、電子図書館サービスの関連事業者との調整を進めていきます。
公立図書館で提供されている電子書籍
整備したデータをもとに統計データを作成しました。調査対象となったすべての図書館をあわせると、オールアバウトによる記事コンテンツが全体の40パーセントを超えており、図書館によってはオールアバウト以外のタイトルが1パーセント以下となる例もありました。また、青空文庫やグーテンベルク21など著作権切れの書籍のデジタル版や、著作権切れ書籍を底本とした翻訳やオーディオブックが多く所蔵されていることがわかりました。一方で、それ以外のコンテンツの提供・導入についてはなかなか進んでいない実態も分かってきました。商用コンテンツ(便宜上、地域資料・オールアバウト・グーテンベルク21・青空文庫を除いたものとして定義)では、86パーセントのタイトルでISBNを持つ底本(元となった紙の本か雑誌)が存在していました。8113タイトル中、7010タイトルはISBNが紐付いたことになります。これらのタイトルの中には、新しい版があるにもかかわらず、古い版が所蔵されているケースも多く見られました。
ISBNに紐付かない1103タイトルのうち、512タイトルは、雑誌やオーディオブックなど、もともとISBNを持たないもののAmazon等では従来より流通しているコンテンツでした。さらに残りの591件は、雑誌記事を分割して電子書籍化したもの、市場に流通していないオーディオブック(アルク・パンローリングなど)やBOINTECH社による3D図鑑などがありました。
昨今導入された電子書籍サービスでは著作権処理が容易なコンテンツが、いわば「抱き合わせ」の状態で導入されています。このような実態を無視して、導入図書館数やコンテンツ数のみの評価を続けた場合、一般ユーザーの信頼を損ないかねません。また、DRMの実施主体や契約条件など不明確な点も多く、最終的なユーザー(市民)が置き去りとなっているのではないかと懸念されます。図書館での電子書籍提供は、解決するべき課題や合意形成も多く存在しています。実態を正確に把握した上で議論を進められるよう、本プロジェクトの統計資料を広くオープンデータとして公開することにしました。
調査結果を開く (Google Docs) CC-BY
対応図書館 (2014年10月26日現在)
- 愛知県大府市
- 千葉県流山市
- 愛媛県今治市
- 岐阜県大垣市
- 広島県府中市
- 兵庫県赤穂市
- 兵庫県小野市
- 兵庫県三田市
- 茨城県筑西市
- 香川県綾川町
- 三重県志摩市
- 大分県豊後高田市
- 大阪府松原市
- 大阪府堺市
- 島根県浜田市
- 栃木県大田原市
- 栃木県高根沢町
- 徳島県徳島市
- 和歌山県有田川町
- 山口県萩市
- 山梨県立図書館
- 山梨県山中湖村