アイヌ:祭具「トゥキ」内に謎の木片 空洞に厚さ数ミリ

毎日新聞 2014年10月26日 09時05分(最終更新 10月26日 11時07分)

CTスキャナーによるトゥキの断面画像。下部の空洞内に薄い木片のようなものがある=九州国立博物館提供
CTスキャナーによるトゥキの断面画像。下部の空洞内に薄い木片のようなものがある=九州国立博物館提供

 北海道平取(びらとり)町立二風谷(にぶたに)アイヌ文化博物館の所蔵で、アイヌ民族が祭具として使う「トゥキ」(杯)と呼ばれる漆器の内部に、木片のようなものが存在することが北海道開拓記念館(札幌市)と九州国立博物館(福岡県)の調査で明らかになった。同記念館は「理由は不明だが、誰かが意図的に入れた可能性はある」とみている。アイヌ民具は科学的調査が進んでおらず、類例が見当たらないため、他のトゥキも調べて分析する。

 同記念館によると、トゥキは神に酒をささげるための祭具。今回のトゥキは二風谷アイヌ文化博物館が約20年前に北見市の業者から購入したもので、高さ約9センチ、直径約16センチ。表面におのが交差した家紋のような印が付いている。こうした器はアイヌが作った中に見られないことから本州との交易で伝わった可能性が高く、イヨマンテ(熊送り)で使用したと推測されるという。だが製作時期や実際に祭祀(さいし)で使われたのかなどは分かっていない。

内部に木片のようなものが存在することが分かったトゥキ=北海道開拓記念館提供
内部に木片のようなものが存在することが分かったトゥキ=北海道開拓記念館提供

 同記念館は今年7月、アイヌ民具の適切な保存や補修に向けて二風谷アイヌ文化博物館と義経神社(平取町)所蔵の「イユタニ」(きね)など約70点の内部構造や劣化状態などを九州国立博物館と共同で調査。X線CT(コンピューター断層撮影)スキャナーで調べた結果、今回のトゥキは上部と下部が別の木でできており、その間の空洞に厚さ数ミリの木片のようなものがあることが判明した。形状や正確な大きさは不明。

 同記念館の杉山智昭学芸員によると、胎内に小さな像やお経がある仏像のように、宗教的な意味合いを含んでいる可能性もあるという。今後、同記念館などのトゥキを調査し、「この謎を解いてみたい」と話している。

 今回のトゥキは、二風谷アイヌ文化博物館で12月15日まで開催中の特別展で公開している。【立松敏幸】

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