阿吽とは、以下のような意味である。
阿吽(あうん、Skt:A - hum)は仏教の呪文(真言)の1つ。悉曇文字(梵字)において、阿は口を開いて最初に出す音、吽は口を閉じて出す最後の音であり、そこから、それぞれ宇宙の始まりと終わりを表す言葉とされた。
また、宇宙のほかにも、前者を真実や求道心に、後者を智慧や涅槃にたとえる場合もある。
次いで、対となる物を表す用語としても使用された。特に狛犬や仁王、沖縄のシーサーなど、一対で存在する宗教的な像のモチーフとされた。口が開いている方を阿形(あぎょう)、閉じている方を吽形(うんぎょう)と言う。
転じて、2人の人物が呼吸まで合わせるように共に行動しているさまを阿吽の呼吸、阿吽の仲などと呼ぶ。
ここに書いていないことを少し付け加えると、もともとは古代のインド語であるサンスクリット語(梵語)の最初と最後の字音のことだという。日本語の五十音の最初が「あ」で、最後が「ん」になっているのも梵語の字音配列の影響下にある。
この発音の形から、
「あ」=口を開く
「うん」=口を閉じる
の意味になり、ここから吐く息、吸う息(=呼吸)という意味が生じた。
対になって仏敵を遮断するという仁王像のデザインは、西暦五、六世紀には完成していた。以後日本でも江戸時代までは竜や狛犬、鬼瓦、獅子の阿吽像が広まっていったものの、明治初期頃には終焉を迎えたという。
「日本のかたち縁起(彰国社)」には以下のような説明がある。
「あうん」のデザインは、「仏敵」から仏を護るデザイン、社寺建築に特有のデザインという限界を超えることはなかった。このことを裏返していえば、「あうん」のデザインは民家に広がらなかったということである。民家にも鬼瓦は使われるが鬼面のものはほとんど使われないのが、そのいい例である。その理由として、隣家をにらみつけることになってはまずいからともいわれるが、なにより一般の人間世界とは異なった世界のデザインという意識のほうが強かったのではなかろうか。実際、自宅を「あうん」で飾るとなると、自分が別世界の「仏様」になってしまう理屈になるのである。
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なぜこのような「阿吽」の話を書いているかというと「All You Need Is Kill」の表紙がまさしく、
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阿!
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吽!
になっている!と思ったからである。
単にそういう風に見えて面白いというだけでなく、上記の「阿吽」の意味とこの漫画の内容とは、絶妙に通じている。
「始まりと終わりを表す」
「前者を真実や求道心に、後者を智慧や涅槃にたとえる場合もある」
「2人の人物が呼吸まで合わせるように共に行動しているさま」
「一般の人間世界とは異なった世界」
もっと詳しく説明してみたい気もするのだがネタバレになってしまうし、何しろ「内容にほとんど触れない漫画評」なので、これ以上は触れる訳にはいかないのである。
気になる方はぜひ、その目で確かめていただきたい。