無戸籍者に厳しい現実 進学も夢も断念…「透明人間のよう」:イザ!

2014.8.22 16:11

無戸籍者に厳しい現実 進学も夢も断念…「透明人間のよう」

 「生まれたときからつらい思いをさせ続けた。子供には罪がないんです」

 7月31日、神戸家裁で開かれた埼玉県内の無戸籍の女性(32)が、母親の前夫=死亡=との親子関係の不存在の確認を求めた訴訟の第2回口頭弁論。同県のさいたま家裁からテレビ電話を通じて証言に立った母親は、女性が無戸籍のために進学や夢をあきらめざるを得なかった境遇を振り返り、そう訴えた。

 訴状などによると、母親と前夫は昭和48年に結婚。兵庫県明石市で暮らしていたが、前夫から日常的に暴行を受けるように。ときには包丁を突きつけられ、「殺す」と脅されることもあったという。

 そんな生活に耐えかねた母親は、55年に東京都内に避難。前夫から逃げている際に知り合った別の男性と交際するようになり、翌56年に原告の女性を産んだ。母親が前夫と離婚することができたのは59年だった。

 民法の規定では、母親が女性の出生届を出すと、前夫の子となってしまう。母親は戸籍を通じて前夫に居場所が知られることを恐れ出生届を出せなかった。このため、女性は無戸籍での生活を強いられた。

 「私は透明人間のような存在。何者かわからないことで、精神的苦痛を受け続けた」

 女性は住民票を提出することができず、高校進学をあきらめた。健康保険にも加入できず、歯医者に通院することすらできなかった。調理師を目指したが、戸籍謄本を取ることができないため、調理師免許を取得できず、勤務先から正社員になるように勧められても、なれかった。女性はこれまで、アルバイトをしながら細々と生活してきたという。

 女性は、裁判で母親の前夫との親子関係がないことが認められた場合、父親欄が空白の戸籍をようやく得ることができる。代理人には、夢だった調理師への道を再び歩き始めると話しているという。

 判決は9月18日に言い渡される。

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