豊橋市では平成24年、女児(4)が両親に食事を与えられないなどのネグレクト(育児放棄)を受けた末、衰弱死したという事件があった。亡くなった加藤杏奈ちゃんは、市の健診を受けておらず、健診を担当する部署は所在もつかめていなかった。
一方、両親は、児童手当や子ども手当を受け取っていた。健診とは別の部署に提出された書類には父親の健康保険証の写しが添付されており、そこには勤め先も記載されていた。
杏奈ちゃんの所在を調べる重要な手がかりだったが、市内部で情報は共有されず、対策は取られないまま、杏奈ちゃんは命を落とした。
苦い記憶。事件以降、市は居所不明の子供の問題に積極的に取り組んでいるが、冒頭のような事例はまだ残っている。
市の担当者は「杏奈ちゃんの事件を重く受け止め、居所不明の児童がいればできる限り追跡している。だが、手がかりが途切れてしまうと、それから先には進めなくなってしまう」。
■居所不明、大阪が発端
居所不明の子供がクローズアップされたのは、大阪がきっかけだった。
24年4月、大阪府富田林市で、住民登録上は9歳のはずの男児が生後まもなくから行方不明になっていたことが発覚。14年9月生まれの男児は、実際は1歳になる前に死亡しており、祖母らによって15年2月、同市内の河川敷に埋められていた。
この事件により、男児と同じような居所不明の子供が全国に1千人以上いることが取り上げられ、社会問題化した。