無戸籍者「全国1万人」推計も 住民票がなく不安定な生活:イザ!

2014.10.25 15:14

無戸籍者「全国1万人」推計も 住民票がなく不安定な生活

 ■DVの前夫恐れ無戸籍状態

 「氷山の一角」。法務省による無戸籍者の調査結果に対し、無戸籍の女性や支援団体は「実態はもっと多いはず」と指摘する。個人情報保護に配慮し報告が遅れている自治体もあり、実態把握はこれからだ。無戸籍者は生活が不安定で、早急な対策を求めている。

 「無戸籍者の数を把握するだけでなく、生活実態をしっかり聞いて」。戸籍を得るため、母親の前夫=死亡=と親子関係がないことの確認を求めた訴訟で、9月に神戸家裁で親子関係の不存在が認められ、戸籍の取得手続き中の埼玉県内の女性(32)はこう訴えた。その上で「今後はどうすれば無戸籍が解消されるかなど解決策を示してほしい」と話した。

 無戸籍者を支援する「民法772条による無戸籍児家族の会」(神戸市)にはさまざまな相談が寄せられる。東日本の30代女性は前夫のドメスティック・バイオレンス(DV)から逃れた後、別の男性との子供を出産。子供は小学校低学年になったが前夫が怖く、無戸籍状態のままだ。無戸籍の兵庫県の40代男性は小学校にも行っていない。住民票がないこともあり、安定した職に就けず、飲食店でアルバイトをしている。

 これまでに約700件の相談を受けた同会は無戸籍を解消するための裁判件数などから、全国の無戸籍者数を約1万人と推計する。

 調査では、無戸籍になった理由の大半が離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子と推定する「嫡出推定」だった。

 同省によると、実父の子にするには(1)前夫が自分の子供であることを否認する(2)前夫と子供に親子関係がないことを確認する(3)実父が認知する-のいずれかの裁判手続きが必要だが、前夫が関与するため及び腰になりがちだ。

 無戸籍者問題に詳しい南和行弁護士は「裁判手続きには弁護士費用やDNA鑑定などの負担もある。収入が不安定な無戸籍者は敬遠してしまう」と話した。

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