日本人の死因のトップであるがん治療には、外科的手術や放射線治療、最後の手段として化学療法があるが、今この構図が大きく変わる可能性が出てきた。免疫を使ってがん細胞を攻撃する新たな免疫治療薬「抗PD―1抗体」が実用化されたからだ。世界に先駆けて実用化したのが関西の中堅製薬、小野薬品工業だ。画期的な免疫薬とは――。
■「オプジーボは革命的なクスリ」と高評価
「がん研究、治療を変える革命的なクスリだ」。慶応義塾大学先端医科学研究所所長の河上裕教授は9月から日本で発売が始まった小野薬の抗PD―1抗体「オプジーボ」(一般名ニボルマブ)をそう評価する。
ニボルマブは難治性がんの1つ悪性黒色腫(メラノーマ)の治療薬として小野薬と米ブリストル・マイヤーズスクイブ(BMS)が共同開発した新薬だ。がんは体内の免疫に攻撃されないように免疫機能を抑制する特殊な能力を持つ。ニボルマブはこの抑制能力を解除する仕組みで、覚醒した免疫細胞によってがん細胞を攻撃させる。
世界的な革命技術として、米科学誌サイエンスの2013年の「ブレークスルー・オブ・ザ・イヤー」のトップを飾った。今や米メルク、スイスのロシュなど世界の製薬大手がこぞってこの仕組みを使った免疫薬の開発を加速させている。
悪性度が高いメラノーマは5年後の生存率は1割前後という極めて危険ながんだが、米国、日本での臨床試験(治験)では「増殖を抑えるだけでなく、がん細胞がほぼ消えてしまう患者も出た」(河上教授)。
米国での他の抗がん剤と比較する治験では既存の抗がん剤を取りやめ、ニボルマブに切り替える勧告も出たほどだ。肺がんや胃がん、食道がんなど他のがん種に対する治験も進んでいる。
世界の製薬大手が画期的な新薬開発に行き詰まるなか、なぜ小野薬が生み出せたのか。
1つは関西の1人の研究者の存在がある。「PD―1」という分子を京都大学の本庶佑名誉教授らの研究チームが発見したのは1992年だ。小野薬もこの分子に目をつけ、共同研究を進めた。PD―1が免疫抑制に関わっている仕組みが分かったのは99年で、創薬の研究開発が本格的に始まるまでにおよそ7年。実際の治療薬候補が完成し治験が始まったのは2006年で、開発から実用化までにおよそ15年かかったことになる。
当時は「免疫療法は効果が弱い」「切った(手術)方が早い」など免疫療法に対する医療業界の反応は冷ややかだった。医師や学会だけでなく、数々の抗がん剤を実用化した製薬大手も開発に消極的だった。
小野薬品工業、オプジーボ、メラノーマ、ニボルマブ、メガファーマ、オパルモン
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