“自転車革命都市”ロンドン便り<9>意外と簡単“飛行機輪行” そろそろ挑戦したい人のための最新事情
日本各地でのサイクリングイベント(ヨーロッパで言うところのセンチュリーライドやグランフォンド)が盛況となっていますが、これらをひと通り経験したサイクリストが次に目を向けるのが、海外のサイクルイベント参加や、自転車を持参する海外旅行ではないでしょうか。
わたしはこれまで十数カ国で自転車に乗ったことがあり、海外旅行も自転車があると楽しさが何倍にもアップすることを実感しています。今回は、日本と英国の往復やヨーロッパ内の旅など、さまざまな形態や航空会社で戸惑いつつ輪行してきた自分の経験をもとに、飛行機輪行最新事情についてレポートしたいと思います。
自転車の扱いは航空会社ごとに大きく異なる
海外輪行は「意外と簡単、おそるるべからず」というのがわたしの率直な感想です。ただし、下調べはインターネットを使って念入りに。
どこかに自転車を持って行きたいとなったら、まずは就航している航空会社のサイトで手荷物ポリシーを調べます。現状、自転車の扱いは航空会社ごとに大きく異なり、料金だけでなく、ケースの大きさや重量の制限もバラバラです。事前予約が必要かどうかも違います。しかも、その内容がときどき変わっていることがあるので、毎回チェックが欠かせません。
複数の航空会社が飛んでいるなら、人間の航空運賃と自転車の追加料金とを足して比べましょう。日本語で説明がなければ英語のページを頑張って読み込むことも必要です。
たとえばヴァージン・アトランティック航空には、通常の預入荷物にプラスして「自転車はケースを含めて23kg以内なら無料」というありがたいポリシーがあります。日系含めて多くの航空会社は片道7000円~2万円の料金を設定しています。
エアフランスとアリタリアは以前は「預入荷物が1つで23kg以内なら自転車ケースであっても無料」ということで統一だったと記憶していましたが、いま確認したところ、エアフランスは「無料の預入荷物とは別に自転車は別料金」となっていました。一方でアリタリアは自転車が入っていようといまいと、「重量が23kg以上の場合のみ超過重量料金適用」とのこと。ややこしい…。
あとは、可能なら乗り換えがない直行便を選ぶべきでしょう。空港での取り扱いで自転車がダメージを受ける可能性が高いので、そのリスクを少しでも減らすことができます。また、預けた荷物を取り扱うのは空港のスタッフなので、航空会社と自転車荷物の扱いがいい・悪いということはあまり関係なさそうです。
ケースはハードにするソフトにする? 新顔も登場
航空会社の定める荷物サイズや重量の制限、料金が確認できたとします。次はどんなケースで自転車を運ぶか。自転車専用ケースは、とくにハードシェルタイプのものは5万円~はするので、最初から購入はハードルが高いかもしれません。いちばん安上がりなのは、自転車ショップで自転車の納品に使われた段ボール箱をもらって使う方法です。
ただし、メーカーによっては箱が小さめできれいに梱包するのが一苦労だったり、往復の間に箱が破れてしまったこともありました。個人的な経験では、ブリヂストンサイクルの箱はゆったり大きめで作りもしっかりしていて、「どうせもらうならブリヂストン」とは思っています。
専用ケースは大きく「(1)ハードシェル、(2)セミハードシェル、(2)ソフト」に分かれ、一般的に前者ほど値段が高くなります。ハードなほうが中身を守る性能が高いのはもちろんだけれど、セミハードやソフトケースは使わないときにスペースをとらずに収納できたり、ケース自体の重量が軽いなどのメリットもあるので検討する際のポイントに。
そして最近登場した、強化した段ボールを素材にした「バイクサンド」という専用ケースは、ハードシェル的でありながらお値段が半分以下という面白い商品です。段ボールなだけに、骨格である固定板の耐使用回数が5~10回(往復)というのがネックですが、どのくらい使うかわからないという海外輪行初級・中級者には手頃なのではないでしょうか。
“自宅⇔空港⇔滞在先”の移動手段もポイント
そして忘れてはならない、飛行機輪行の最後にしてもしかして最大の関門が、空港まで・空港からの移動です。日本国内では、空港往復のバス会社の多くは、小径折り畳み以外の自転車はお断りのところが多いようです。確認せずに利用してしまい、温情措置で載せてもらったことはありますが、とくに混んでいると断られる可能性が高いのでご注意。
鉄道は混雑時に邪魔にならないように配慮するなどすれば大丈夫ですが、自宅から駅まで、あるいは乗り換え時の自力運搬には覚悟が必要でしょう。
わたしがよく利用するのは、空港まで宅配便を使う方法です。成田羽田や関空ならJAL系列ABCの「大型手荷物宅配」が便利。地域によりますが、4000円前後で空港まで送ることができ、出発日までの数日間預かってもらえます(むしろ早めに送る必要があります)。自転車に対応している国内で一般的な宅配サービスは空港に支店がないことが多いようです。
目的地の空港から滞在先のホテルなどまでは、タクシーを手配するしかないことが多いと思います。2人づれで自転車も2台なら、ワンボックスタクシーを。自転車ケースのような大きな荷物も載せてくれるホテルの送迎バスに恵まれることもありますが、どちらかというと、こちらはまれ。
あるいは空港からすぐにレンタカーという手もありますが、ヨーロッパで一般的な5ドアの小型車だと後部座席をフラットにしても、ハードケース1つがギリギリという感じ。ソフトケースなどで自転車を出してケースを畳めば2台目が積めたりする…というサイズ感です。そういった点でも、ソフトケースにはそれなりの長所があります。アメリカならステーションワゴンを予約しておけば、かなり安心です。
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…だいぶ詳しくなってしまいましたが、こういった細かい点をひとつひとつ確認しておくことが、旅先での思わぬ出費増や、足止めを食うなどのストレス回避のために大切なことなのです。
「うわぁ手間がかかりそう!」と思う方もいるかもしれませんが、世界を自転車で走るのは本当にすばらしい経験です。苦労の価値は十二分にあると思います。来年の計画に、ぜひ入れてみてはどうでしょうか。
(文・写真 青木陽子 / Yoko Aoki )
ロンドン在住フリー編集者・ジャーナリスト。自動車専門誌「NAVI」、女性ファッション誌などを経て独立起業、日本の女性サイトの草分けである「cafeglobe.com」を創設し、編集長をつとめた。拠点とするロンドンで、「運転好きだけれど気候変動が心配」という動機から1999年に自転車通勤以来のスポーツ自転車をスタート。現在11台の自転車を所有する。ブログ「Blue Room」を更新中。