新・週刊フジテレビ批評

毎週土曜日 AM5:00-6:00 放送中
批評対談 2014年10月18日(土)放送
東京五輪へ スポーツとテレビ


@ テレビコンテンツとしてのテレビ
バレーボール元全日本女子キャプテンの吉原知子氏は「バレーボールがメジャーであってほしいと思う。そのためにはテレビが必要で、選手時代もテレビとスポーツは密着していると感じていた」と話した。さらにシドニー五輪の出場を逃した際のことについて「注目されていたのに、五輪に出られなかったことでテレビはさっと引いてしまった。その時に、バレーボールが忘れ去られてしまうのではという危機感を感じた」と語った。
一方バレーボールがテレビ放送などを意識した様々なルールを変更してきたことについて「選手としてはルール変更は大変だった。ラリーポイント制になると、正確性が求められるので、研ぎ澄まさせるプレーが求められる。競技が変わったように感じた」と述べた。コメンテーターのライター速水健朗氏は最近試験的に導入されているチャレンジシステムを例に挙げ「テクノロジーは視聴者に寄ったシステムでテレビがより面白くなる面もある」と語った。吉原氏は「ルールを変えないままテレビに取り上げてもらえなり、マイナーになっていくのはいけないが、ルール改正でそのスポーツの面白さが削られてはいけない。その辺がすごく難しい」と語った。

A 選手育成とメディア
吉原氏は「スターはいないと成り立たない部分もあると思う。しかし、選手がかわいいと目立つが、それだけでテレビに持ち上げられすぎると潰れてしまうことがある。限度があるのでは。ある程度は必要だろうと思うが、持ち上げられすぎて、うまくいかなくてファンが離れていくと自分が取り残された感じになり、潰れてしまう選手、プレッシャーに負けてしまう選手もいる。」と語った。

GUEST PROFILE
吉原知子元全日本女子バレーボール代表/スポーツコメンテーター

2004年アテネ五輪世界最終予選で主将に指名される。柳本ジャパンの精神的支柱として、闘志を前面に出すスタイルでチームを牽引。見事アテネ五輪出場を果たし日本中を沸かせた。
国内のみならず海外、イタリアでのプレー経験も持ち、また、国内では所属した全てのチームで優勝という華やかな戦績を残し「優勝請負人」と呼ばれた。五輪出場3回の経験は日本女子バレーボール界の至宝と言える。
 2008年に2016東京オリンピック・パラリンピック招致委員を務め、アスリートの立場から招致活動を展開。また2009年より筑波大学大学院で体育学を専攻し、2011年に修士課程を修了。そのキャリアを活かし、2012年には大東文化大学講師を1年間務め、現在はVリーグ初の女性理事としても活動するほか、テレビ解説、バレーボール教室を中心に、講演活動も積極的に行っている。

COMMENTATOR
速水 健朗(ハヤミズケンロウ) 編集者・ライター
批評対談 2014年10月11日(土)放送
「ザ・ノンフィクション」20年目に思うこと


@「ザ・ノンフィクション」が20年続いた理由
「ザ・ノンフィクション」の味谷和哉チーフプロデューサーは、「日曜の午後2時に放送していると多くの人に見てもらえる機会が多い。だからこそ分かり易いテーマで、尚且つ人間関係をしっかり描いてきた。それが視聴者の支持を得られた原因なのでは」と分析した。また、「ドキュメンタリーの裾野を広げたいと常に考えていて、ドキュメンタリーに興味がない人に見てもらうためには…というのを考えながら制作している」と述べた。

A「ザ・ノンフィクション」の現状
最近では視聴率が年々低下傾向にある「ザ・ノンフィクション」。味谷氏は「震災以降、視聴率が下がっている」と分析をする。さらに「最近では多メディア化されていてBSやCSでもドキュメンタリーを放送するようになった。細分化されてしまっている時代の中で制作者が面白いものを探し切れていない」と指摘した。

Bザ・ノンフィクション」を続けるために
味谷氏は、「今後も多くの人に番組を見てもらうためにはネタ幅を広げ、新しいドキュメンタリーの形を、探していかないといけない。やはりチャレンジをして新しいドキュメンタリーの形を提示しないとダメだと思っている」と語った。
そして「ドキュメンタリーを今まで見なかった方に「意外と面白い」と思って貰えるよう制作していきたい」と締めくくった。


GUEST PROFILE
味谷和哉(フジテレビ チーフプロデューサー)
1957年大阪府生まれ 新聞記者を経て1992年フジテレビに入社。2003年から「ザ・ノンフィクション」を担当し、これまで400本近くの作品に携わる。インターナショナルビデオ&フィルムフェスティバル銀賞。

COMMENTATOR
上智大 音 好宏(おと よしひろ)教授
 
批評対談 2014年10月04日(土)放送
海外報道のあり方


@ フリージャーナリストの役割
先月「イスラム国」の支配地域に潜入・取材したフリージャーナリストの常岡浩介氏は、今ニュースなどでは「イスラム国」の組織が整っていると伝わっているが、実際に入ってみると幹部同士の連絡すら取れていないのが現状だと語った。そのため過大な評価が過大な脅威を生んでいると指摘した。
今回の「イスラム国」潜入取材やエボラ出血熱の被害が拡大しているシエラレオネなど、なぜ危険な地域に取材行くのか?という江川氏の質問に対して、常岡氏は「誰も取材していないなら自ら行き取材する必要があるから」と答えた。
常岡氏は3年以上に渡ってシリア取材をしているが、取材現場で一番思うことは十分に伝わっていないことだと言う。「アメリカやイギリスの記者が「イスラム国」に殺害されて世界的なニュースになっているが、シリアではアサド政権によって20万人近くの残虐が行われてきた。その実態はあまり伝えられていないのが現実だ」と語った。

A 日本の常識 世界の非常識
常岡氏は「日本ではアメリカのメディアが常識として伝えることが伝えられていて、現地の人々の声までは届いていない」と指摘した。そして世界には違った常識がパラレルに存在していて「今、欧米で教育を受けた人々が義勇兵になるために現地に入っているが彼らこそパラレルな常識を持って生きているのかもしれない」と語った。また日本人はジハード(聖戦)と聞くとテロと思い浮かべてしまうが、アラビア語ではジハードは努力を意味する言葉で、イスラム教徒にはコーランに記されている普通の事だと話した。

B テレビの力
海外に行くとテレビで日本よりニュースを放送している割合が多いと語る常岡氏。日本のニュースの枠の小ささには疑問があると指摘した。さらに小さいニュース枠で海外を伝える量はさらに少ないと付足した。
常岡氏自身も最近はテレビから海外の情報を得ることはなく、ネットから情報を得ていると話した。しかしテレビの影響力は絶大なのは間違いなく、当たり前の報道しかしていないだけでなく、伝える工夫をすることが今後の課題ではないかと語った。

GUEST PROFILE
常岡浩介(ジャーナリスト)
1969年長崎県生まれ、45歳。
早大卒業後、94年から長崎放送の報道記者として勤務。98年、アフガニスタン内戦を取材するためフリーに。その後、チェチェン、イラク、グルジアなど、旧ソ連とイスラム圏を中心に取材し、雑誌、テレビなどで発表。
2008年に「ロシア 語られない戦争 チェチェンゲリラ従軍記」(アスキー新書)で平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞。他に2010年のアフガニスタンでの誘拐事件を記した漫画作品「常岡さん、人質になる。」(2011年、エンターブレイン、西川たく、岡本まーこと共著)も。

COMMENTATOR
江川紹子(えがわ しょうこ)ジャーナリスト

 
批評対談 2014年09月27日(土)放送
今年のドラマを振り返る


今年4月以降で面白かったフジテレビのドラマとして岡室美奈子氏(早稲田大学教授)は「続・最後から二番目の恋」と「ファースト・クラス」をあげた。「続・最後から二番目の恋」に関しては前作同様の会話の面白さと群像劇が際立ち面白かったという。そして「ファースト・クラス」は沢尻エリカの可愛らしさとたくましくなっていく様が良かったと評価した。
宇野常寛氏(批評家)も同じ2作品をあげ、「続・最後から二番目の恋」は続編だが別物と分析。今回はホームドラマの再構築をしていると指摘し、今時の高齢化社会の大家族を描いていると語った。「ファースト・クラス」に関しては半分バラエティ感覚があると語り、またインターネットの普及により生まれてきたドラマだと分析した。悪口などが表だって言えてしまう時代だからこそマウンティングという言葉がクローズアップされたと語った。
木村隆志氏(ドラマ評論家)は「あすなろ三々七拍子」をあげ、視聴率は低かったが視聴熱は高かったと評価した。毎回、熱い言葉があり、悪い役が出て来ない最近では珍しいドラマだったと分析した。
意見が最も分かれたのがフジテレビ「若者たち2014」だった。岡室さんは押しつけがましいところがついていけなかった。いい作品なのは間違いないのでもう少しテレビと視聴者の距離を考えるべきではなかったのかと指摘した。
宇野氏は初回こそ付いていけなかったが、回を重ねるにつれて役者の演技力やあえてリアリティを度外視したことで割り切って見ることが出来たと擁護した。
木村氏もしっかりとした役者でいい演技を見せてくれた。こういうドラマは是非残して行きたいと高く評価した。
ドラマでなかなか視聴率が獲れない今、NHKの姿勢を3人は評価。脚本や出演者が新しくなくても演出で新しく見せチャレンジしていると指摘した。
民放ではTBSがWOWOWと手を組んだりと頑張っているのでは
木村氏は評価した。

今後、ドラマに求められることとして、
岡室氏は月9で是非、恋愛ドラマを復活して欲しいと語り、
木村氏は連続ドラマだからこそ1話1話のストーリーの大切さもあるが背景に流れる大きなテーマなどを連続ドラマだからこその、
続きが気になるような本来の魅力が今、求められている気がすると
語った。そして宇野氏は、じっくり1時間見せるドラマではなく、この時代だからこそ10分などの短いドラマがあってもいいのでは。
そしてそんな新しいドラマの表現をフジテレビには挑戦して欲しいと締めくくった。

GUEST PROFILE
岡室美奈子(早稲田大学教授)
1958年生まれ。三重県生まれ。アイルランド国立大学ダブリン校にて博士号を取得。1997年、早稲田大学文学部専任講師、2000年、助教授を経て、2005年より教授。2007年より文化構想学部教授。現代演劇研究、テレビドラマ研究を専門とする。特にアイルランド出身の劇作家、サミュエル・ベケット研究では、日本を代表する存在。2013年には、早稲田大学坪内博士記念演劇博物館の第8代館長に就任。主な編著書に、『ベケット大全』(白水社)、『サミュエル・ベケット!−これからの批評』(水声社)、『六〇年代演劇再考』(水声社)などがある。

木村隆志(ドラマ評論家)
1973年静岡生まれ コラムニスト、テレビドラマ評論家・タレントインタビュアー。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴する重度のウォッチャー。雑誌やウェブにコラムを提供するほか、取材歴1000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書は『トップ・インタビュアーの聴き技84』など。

COMMENTATOR
宇野 常寛 評論家

 
批評対談 2014年09月20日(土)放送
バラエティの未来のために
今回の批評対談はスペシャル版としてバラエティのスペシャリスト4人(放送作家、元BPO委員、コラムニスト、バラエティ番組制作者)をゲストに呼び「バラエティの未来のために」というテーマで座談会が行われた。
(以下、一部抜粋)

「今のフジテレビは面白いのか」
水島:どの時代も面白いものもあれば面白くない番組もあったと思うが、今の番組が将来、5年後面白い番組として記憶に残るかと思うとちょっと心配。
吉田:ゴールデンはほぼ面白くないが、深夜枠には注目している。
高須:全部面白いと言いたいが、昔のフジテレビのキラキラした感じは今ない。一方で感じるのはフジテレビは芸人愛はすごい。
小松:自分たちは面白いと思っている。しかし、視聴率を見ると、多くの人が同時に面白いと思ってもらえる番組は少なくなっている。そこに危機感を持っている。
フジテレビの考え方は人間中心。人間中心に作って、その人間の生きざまを通して、何らかのメッセージが世の中に伝わる、そういう考え方でやっている。

「バラエティ全体について」
高須:テレビは毒がないと面白くない。縁日のように射的があったりとか、うなぎ釣りがあったりとか、色々な食べ物が売っていたりと、テレビも色々なくてはならない。
しかし射的は、戦争を行っているかもしれない時に子供がピストルもっているのは良くない、やめておきましょうとか、うなぎ釣りは針が危ないから子供が怪我するといけないから、やめておきましょうとか。色々なことをやめて行く。そんな状態になっている。
吉田:ラテ欄がみんな同じに見えてしまう。特にゴールデンは、看板のMCは違ったりするけど、最近は坂上忍か、ふなっしーかみたいな。みんな同じ。
小松:(今人気の出演者などに)明確に乗らないっていうスタンスにフジテレビは変わろうとしている。
フジテレビは自分たちが面白いと思う事を世の中に問うことによって、生き長らえてきたテレビ局。マーケティングで番組を作ることが上手ではない。
インターネットとかではなく、道端歩くなり、人と話すなりして、自分が面白いと思うものを見つけて、それで番組を作ることをテーマとして取り組んでいる真最中。
吉田:深夜枠は見たこともないことをやるから驚かされる。人材や企画の新鮮さがある。チャレンジ枠?
水島:深夜で番組を育ててゴールデンに持っていく図式に無理がある。ゴールデンにはゴールデンのチャレンジがあると思う。

「今のバラエティ制作で必要なこと」
水島:バラエティこそが最もテレビらしいジャンル。自由なジャンルで、発明があり、どんどんテレビらしさを発展させる原動力だった。BPOで意見書を書くときにそれを忘れないでというメッセージを出してきた。
一番大事なのは視聴者と仲良くなること。出演者と仲良くなること。愛が見えなかったときに「これダメなんじゃないか」となっていく。
小松:コンプライアンス、法律を守れということは当たり前のこと。やっちゃいけないことは昔から変わらない。バラエティ番組であろうが、それを見て不幸になったり、悲しい思いをする人は一人としていてはいけない。愛の問題。どれだけ愛情を注いでいるか。

「バラエティの未来のために」
水島:今この番組では誰を笑わせようとしているんだっていうことを明快にしなくてはいけない。世の中には一番笑えない人たちがいて、その人たちを笑わせた時にバラエティがジャンプすると思う

吉田:テレビをみてて思わず吹き出した。それをしてくれるのがバラエティだと思う。だから失笑させてください

高須:ドキドキした番組は「いいとも」のグランドフィナーレ。僕個人が見たことがなかったし、できるとも思わなかった。
僕は自分が見たいものしかないんで、自分が見たいものは人が見たいであろうということでしか作れない。僕が見たいものを作って行く。
小松:大事なことはあきらめないことだと思います。大勢の人に同時に面白いと思ってもらうのは難しかもと思いがよぎるかもしれないが、あきらめない。その覚悟を持つかどうで違うと思う。

GUEST PROFILE
水島久光(元BPO委員)
東海大学文学部広報メディア学科教授。2008年よりBPO放送倫理検証委員を6年間務め、今年3月退任。著書『閉じつつ、開かれる世界―メディア研究の方法序説』『テレビジョン・クライシス―視聴率・デジタル化・公共圏』など多数。

高須光聖(放送作家)
1963年12月生まれ、兵庫県尼崎市出身。
お笑いコンビ・ダウンタウンと幼なじみで、ともに「ごっつええ感じ」「ガキの使いやあらへんで!!」など多くのヒット番組を生み出した。現在も「ワイドナショー」や「新堂本兄弟」など多くのバラエティー番組を手掛ける。
2000年自ら企画した「未来日記」が映画化され、脚本・演出を務めた。

吉田潮(ライター)
ライター・イラストレーター。法政大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。「週刊新潮」(新潮社)、「ラブピースクラブ」(ラブピースクラブ)などで連載中。主な著書に『2人で愉しむ新・大人の悦楽』(ナガオカ文庫)、『気持ちいいこと。』(宝島社)、『幸せな離婚』(生活文化出版)など。


小松純也(バラエティー制作センター部長)
1990年フジテレビ入社。
「ダウンタウンのごっつええ感じ」「笑う犬の冒険」「トリビアの泉」など
フジテレビの代表するバラエティ番組を手掛けてきた

COMMENTATOR
法政大 稲増 龍夫(いなます たつお)教授

 

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