生糸貿易“生き証人”日東倉庫の取り壊し…文化財指定求めるも、所有企業「NO」
産経新聞 10月25日(土)18時15分配信
横浜港の生糸貿易の歴史を今に伝える旧「日東倉庫日本大通倉庫」(横浜市中区日本大通)が取り壊される見通しが強まり、建築家らの間で保存を求める声が高まっている。所有企業は取り壊す意向を変えず、国や県、市による文化財指定や登録も難しい状況の中、保存方法について関係者らの模索が続いている。(小林佳恵)
■明治43年に竣工
同倉庫の竣工(しゅんこう)は明治43(1910)年。翌年には隣に、日本で最初の鉄筋コンクリート造のオフィスビルとして知られる旧「三井物産横浜ビル」が完成。2つの建物は、三井物産横浜支店の生糸倉庫と事務所として、横浜港の生糸貿易の拠点となった。
建築史が専門の横浜国立大学の吉田鋼市名誉教授(67)によると、倉庫は昭和27年に三井物産の系列会社である日東倉庫が所有することになり、一般の倉庫として使用していたが、その後ビルとともに所有者が変わっていた。
吉田名誉教授は「鉄筋コンクリートとれんが、木を組み合わせた珍しい構造。鉄筋コンクリート造の三井物産横浜ビルの前段階として、実験的に造ったのだろう」と指摘したうえで、「2つの建物がセットで、日本の鉄筋コンクリート建築の発展の軌跡を伝える貴重な証拠物件」と訴える。
また、倉庫は「関東大震災で焼け野原となった横浜に残った貴重な建物」(市都市デザイン室担当者)でもあり、吉田名誉教授によると、大震災で大きな被害を受けなかった倉庫や収蔵していた生糸は、震災後の生糸貿易復興の支えとなった。
■所有企業は「解体」
不動産仲介のケン・コーポレーション(東京都港区)が昨年、倉庫とビルを都内の不動産会社から取得。今年5月には、横浜市に倉庫を解体する意向を伝えた。
これを受け、市は6月、ケン社に対し保存の申し入れを行い、7〜8月には、日本建築学会や日本建築家協会などが相次いで、倉庫とビルの保存を訴える要望書を同社と市に提出した。
だが、同社は「倉庫は取り壊し、ビルは残す予定。解体時期は未定だが、できるだけ速やかにしたい」として、解体の方針を変えていない。
市文化財の願いも…
市教委の生涯学習文化財課は「市の文化財に指定したい」とするものの、指定には所有者の承諾が必要なため、難しいという。
日本建築家協会関東甲信越支部・保存問題委員会の笠井三義(みつよし)さん(63)は「所有者が民間企業の場合、所有者側にメリットがないと、保存は難しい」と指摘しつつ、「保存に取り組む各団体や市とで協議して、何とか残す方策を探りたい」と話している。
最終更新:10月25日(土)22時55分
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