北海道民の中には、我々の先祖が北海道を苦労して開拓した、苦労したとか、よく言う人がいる。
ただ、そんなに「大変」だったのなら北海道に来なかったらよかったではないか、ということにならないだろうか。
そういう人たちは、本州なり四国なり九州で農業なり漁業なり侍なりやっていればよかったのだ。北海道に来てわざわざ「苦労」して開拓する必要はなかったはずだ。
それが結果的に先住民族アイヌには迷惑になったと言わざるを得ないのだから。
アイヌが自ら北海道をあげるから皆さん来て下さいなどと和人の移住を推進したという事実はない。
こんなことを書くと、素直に認めたくない人もいるだろう。
我々の先祖は大変な思いをして北海道を切り開いた、アイヌに迷惑などかけてない、と思っている人はぜひ答えてほしい。
「そんなに大変だったのならどうしてわざわざ北海道に来たのか?来なかった方が苦労しなくてよかったのではないか?」という問いに。
日本が北海道を領有しないで放置しておいたらロシアが北海道を植民地化して、シベリアやサハリンの先住民を支配したごとく、アイヌを支配・同化しただろうという屁理屈もあるが、これについてはすでに書いた。
それならそれでロシアが勝手に北海道を併合して侵略したことになるので、その場合は日本の罪は一つ減り、ロシアが批判されることになったであろう。
要するに、彼ら(ロシア)にとられたくないから、我々が先にとりました、ということではないのか。
それならそれで素直に認めるべきではないか。
別に今になって和人は出て行くべきだとかそういう話をしているわけではない。
(和人である私自身も今は北海道民なので、出て行かなければならないということになるであろう。)
時間を戻すわけにはいかず、今までの歴史をなかったことにはできない。
繰り返しになるが、過去に何があったのかを問うているのである。
北海道の植民地化の背景には、国の植民政策や国防問題、場合によっては棄民政策が関わっているので、これについては改めて書きたい。
また、農村(特に東北)の貧困問題も関わっている。
農家の次男や三男が家業を継ぐことができず、北海道に渡ってきたという話は各地に残っている。
確かに、開拓民たちは「苦労」して北海道の原野を切り開いたのだろう。
そして、それぞれに事情・理由があったのだろう。本州での生活に困窮して、北海道に渡ってきた人たちもいたのだろう。
中には北海道で一旗挙げようと渡ってきた人もいたかもしれない。
今さら、時間が戻るわけではない。
しかし、今日の北海道は、アイヌ民族の犠牲の上に成り立っていることは忘れてはいけないと私は思う。
また、樺太や千島においても、もともといた先住民族アイヌは、開発の犠牲者であった。強制移住の歴史もある。
いわゆる北方領土などについて、日本人が「我々父祖の切り開いた北方領土」などと言ってロシアに返還を要求しているが、そこはもともとアイヌ民族が暮らす土地だったのである。
クナシリ・エトロフ・シコタン・ハボマイなど、これはすべてアイヌ語なのである。
そのことを無視して、「我々の父祖の切り開いた」などと表現してしまうことはアイヌが先住していた歴史を抹殺するものであり、大きな問題ではないか。
2012-7-3 加筆・訂正