2014年10月25日02時02分
インターネットの検索サイトに自分の名前を入力すると、犯罪とのかかわりを示すかのような検索結果がいつも出てくる。
困った男性の訴えに対し、東京地裁が今月、検索最大手グーグルに検索結果の一部を削除するよう命じた。
検索サイトはいまや暮らしの中で欠かせない便利なものだ。だが、根拠のない情報を含むサイトに導くこともある。
その運営会社はかねがね、検索結果の内容や真偽に責任はなく、中立的な仲介者にすぎないと主張してきた。
しかし、裁判所は責任を明確に認めた。検索結果の表題や内容の抜粋はものによっては人格権を侵し、会社は削除しなくてはならないと判断した。
まっとうな決定である。本来は問題サイトの情報そのものの削除が筋だが、責任者が不明だったり、依頼に応じなかったりすることが少なくない。検索で出てこなければ、不特定多数の目に触れることはない。
同様の判断は、欧州司法裁判所が5月に示した。あるスペイン人が過去に遭ったトラブルを示す検索結果が問題になり、「忘れられる権利」という言葉が話題になった。
この後、欧州では検索結果の削除依頼が急増し、多くは逮捕歴や過去の反社会的な行動についての情報だという。
処罰を受けた後も、半永久的に自分の過去がさらされるのは酷であり、更生を促すうえでも望ましくない。まして無関係のことで窮地に立たされることがあってはならない。
一方、だからといって検索サイトの情報表示をむやみに操作するのも問題がある。検索サイトが市民の情報アクセスの面で果たす公益性は高いからだ。
例えば政治家など公的な立場にある人の過去の発言や行動など、仮に本人が不都合ととらえて削除を求めても、広く共有、提示されるべき情報がある。
どんな場合なら検索結果の操作が許されるかは、当事者が受ける影響と公益をくらべて慎重に判断すべき問題だ。
運営会社にとっては削除の当否を個別に吟味するより、削除依頼にすべて応じる方がコストは低い。だが、市民の情報力が大きく影響を受けるだけに、そのやり方は社会全体で論議を加えていくべきだろう。
政府が夏にまとめた大綱で、個人データに関する規制は、政府から独立した第三者機関が担うことになった。ネット検索とプライバシーの関係をめぐり、この機関がどんな役割を担うかも検討を深めるべきだ。
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