日本人は汁かけ飯が好きである。
お茶漬けや湯漬けなども一種の汁かけスタイルであるが、はっきりとちがう。
汁かけ飯の場合は、米飯にみそ汁など味のついた汁をかける。当然、汁の中には具が入っているケースが多い。したがって、1椀でとれる栄養効果もお茶漬けなどよりは、はるかに高くなる。
昔は農繁期の昼食は、麦めしにみそ汁をかけて早食いし、また畑や田の仕事に戻ったものである。そのような食べ方を経験した人たちが、地方の長寿者に多い。骨太で日焼けした顔をほころばせ、いつもニコニコして愉快に長生きしている。
この汁かけ飯が、もっとも本領を発揮したのが戦国時代。急に出陣が決まった時でも、即座に汁かけ飯で腹ごしらえができる。汁はほとんどの場合みそ汁だから、ダイコンとかネギ、サトイモなどが入っている。調味はみそだから、大豆のアミノ酸やビタミン、ミネラル類がたっぷり。だから消化もよく、即戦力のスタミナもついた。
戦国武将のエピソードを集めた『武者物語』の中に汁かけ飯の食法が出てくる。小田原城主の北条氏康(うじやす)が後継ぎの氏政(うじまさ)と食事をした。すると、あろうことか氏政は1椀に2度も汁をかけた。
これを見て氏康は涙を流し、「北条家もわしの代でおしまいじゃ」と息子の行く末を嘆いたという。その通りに秀吉に攻められ北条一族は氏政の代で滅亡。汁かけ飯は1度の汁かけが決まりであり、それが分からぬようでは大将の器にあらずといったのである。きびしい。
(絵と文・食文化史研究家 永山久夫)
■とん汁で汁かけ飯
汁かけ飯を現代の“ビジネス戦争”に活用して勝ち進もうではないか。ゴボウ、ニンジン、タマネギを混ぜてブタ汁を作り、ご飯にたっぷりかけて平らげる。ブタ肉には頭の回転をレベルアップするビタミンB1が豊富に含まれているのだ。