万博記念公園(大阪府吹田市)の活性化を議論している大阪府は、2009年に廃止された公園内の旧府立国際児童文学館(児文館)の建物の今後のあり方について、26日に策定する将来ビジョンに盛り込まない方針を固めた。書庫がスペースの3分の1を占めるなど、他の用途への活用が難しいことが理由だ。簿価は6億円(13年度)で、受賞経験もある建築物が「塩漬け」状態となる。
旧児文館は、国内外の児童書を収集、公開、研究する施設として、1984年に開館した。府は年間1億7400万円かけて財団法人に運営を委託していたが、08年に知事に就任した橋下徹・大阪市長が「立地の悪さ」などを理由に閉館を決め、10年5月に府立中央図書館(東大阪市)内に移転した。
建物は、直線を基調にした白くシャープな外観で、86年に日本建築士会連合会の奨励賞を受賞した。2階建てで延べ3100平方メートル。しかし、書庫が944平方メートルを占め、図書館以外の利用は難しい。現在は府が公文書4万点を保管し、警備費などで年963万円かかっている。市民の利用はできず、周囲はひっそりとしている。
今春、国の独立行政法人から公園管理を引き継いだ府は、有識者による審議会で、今後50年間の公園管理の基本方針となる「将来ビジョン」策定に着手した。海外から集客を図る「国際観光公園化」を目指し、大阪万博(70年)の象徴だった故岡本太郎氏作の「太陽の塔」を半世紀ぶりに内部公開する方針を決め、日本庭園や森林のあり方についても議論してきた。
しかし、府の担当部局が審議会で使っている資料の地図では、旧児文館は隣接する駐車場と一体とみなして「駐車場」と表記され、存在自体が無視されている。委員からほとんど意見は出ず、26日の将来ビジョン骨子案は、太陽の塔の内部公開などを盛り込む一方で、旧児文館の将来像は示さない見通しだ。
万博記念公園を巡っては、松井一郎知事と橋下市長が、2025年の万博誘致を目指す夢を描く。旧児文館について府の担当者は「確かに保管庫ではもったいなく、検討の優先順位が低いわけではない」としながらも、「将来像は何も決まっていない」と説明している。【熊谷豪】
2014年08月19日 16時32分