イスラム教のそれしか聞かないのだとすれば、おそらく単に情報網が狭いか、日本語圏では報道されていないだけだ。
例えば、わりと最近、アメリカでリバタリアンの「自警団」活動に身を入れていたカップルが、警官を銃撃して殺傷したことがある。……と、検索しようにもキーワードを忘れてしまっていて、一般的なワードでしか探せないので、情報にたどり着けない。どこで起きたのか、どんな組織名だったのかも覚えていない。そのくらい「薄い扱い」を自分でもしてしまったし、ニュースサイトなどでもそんな感じだ。20分ほどかかってようやく探せたのがこれ。
米ラスベガスの銃撃事件。5人死亡(うち2人は警官)。 https://t.co/SrjNr6QNqZ
— nofrills (@nofrills) June 8, 2014
こんな程度で日本語にしてあったって、ここ経由ではたぶん誰も見てやしない(笑)んだが、こういうのを知らずに「イスラムだけがやるテロ」を語っちゃったりしてるのを見ると、正直、「怒り」に近い感情が生じる。
ともあれ、記事はこれ。読んでない人は読んでください。
Las Vegas cop killers may have white supremacy links: report
2014年 06月 10日 00:05 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idUSKBN0EJ0UQ20140609
The armed man and woman shouted about a "revolution" before opening fire and killing the two uniformed patrol officers, Alyn Beck, 41, and Igor Soldo, 31, who were eating lunch in a CiCi's pizza parlor, police said on Sunday.
ウィキペディアにはソースがたっぷり添えられている。
http://en.wikipedia.org/wiki/2014_Las_Vegas_shootings
で、あんまり表立って語られてないんだけど(「自警団」に関しては言わずもがなだから)、この「テロリスト」2人、バックグラウンドは「クリスチャン」。
http://www.reviewjournal.com/news/bundy-blm/rejected-revolution-jerad-and-amanda-miller-decided-start-their-own
ほか、参照。「パトリオット」運動(武装する権利ガーーーの人たち)に参加しており、アレックス・ジョーンズ(「911真相究明」など陰謀論をフき散らかしている人物)のサイトが情報源だったような人物。
Jerad and Amanda Miller, the Las Vegas shooting couple, were part of the “Patriot” movement: http://t.co/XIztSmb7ej
— CS Monitor (@csmonitor) June 12, 2014
Jerad Miller’s Posts at Infowars Included Speculation about Killing Cops | Hatewatch http://t.co/OIMcDWia7I
— J.M. Berger (@intelwire) June 12, 2014
こういうのは「アメリカの過激なプロテスタント」のすることで、他の宗派はそんなことはしないと言う人もいるかもしれないが、そういう人はバルカンについての本を読むといいと思う(バルカンなら全部まとまってるから)。カトリックも正教会も、「過激分子」の居場所となってきたし、「過激主義」を支えてきた。
図説 バルカンの歴史 (ふくろうの本/世界の歴史) 柴 宜弘 by G-Tools |
バルカンの外では、カトリック教会とIRAとの関係もある。1972年7月末の爆弾テロは、神父(故人)が直接関与しているというのが今のところ最終的な結論だ(2010年に出た報告書)。
http://en.wikipedia.org/wiki/Claudy_bombing
キリスト教以外ではイスラエル軍の内部での宗教性もあるし、「宗教的過激主義 religious extremism」で語られる仏教徒の暴力もあるし、ヒンズー(ヒンドゥー)・ナショナリズム(ヒンズー至上主義)(今のインドの首相はこのイデオロギーの人)もある。
どんな信仰の持ち主であろうと、あるいは信仰の有無にかかわらず、「暴力的な行為に走る」人物はいる。日本の社会は「宗教的ではない」ということになっているし、「宗教性」を前面に立てた犯行で「宗教過激派」と言われるようなことが起きることはめったにないけれど、「通り魔事件」が発生して、「誰でもいいから人を殺してみたかった」とかいう容疑者のコメントが出ても、驚く人はいないだろうに、「海外」のことになるとすぐに「宗教」の話にしたがる。(この「海外」という概念がまた曲者なのだが。)
いずれにせよ、基本的に「キリスト教圏」である英語圏では、こと「イスラームのこと」となると話が雑になる。
(キリスト教のボーン・アゲイン願望と破滅願望を抱えた極右のジャンキーやソーシャル・ミスフィットが暴力に走ったケースがあったはずだけど、そういうのが引き合いに出されないというのが何とも)
— nofrills (@nofrills) October 25, 2014
これだ。"The term violent true believer was coined by forensic psychiatrist Dr J Reid Meloy" http://t.co/QHHKaWnncd ティモシー・マクヴェイ、モハメド・アタ、ブレイヴィクなど
— nofrills (@nofrills) October 25, 2014
ティモシー・マクヴェイのことなんか、日本語圏では通じないもんね。
:-P
オクラホマ連邦ビル爆破をやった「社会から落伍した男」はアイリッシュ・アメリカンのカトリックで、一度信仰を捨てたが、死刑執行前にはカトリックの秘蹟を受けている。
そのマクヴェイをヒーロー/アイドル視している「白人のキリスト教徒の過激派」は少なくない。ノルウェーのオスロ爆弾&ウトヤ島銃撃事件のアンネシュ・ブレイヴィクもそのひとりだ。
そのノルウェーの事件のときも、発生当初は「イスラム過激派の犯行」って、世界中のメディアが(ロイターもBBCも)言ってたんだけどね。
「オスロ爆弾&ウトヤ乱射、死者17人」の日本語実況組のログ
http://togetter.com/li/164923