2014年10月25日

「イスラムは過激派がいて大変だなあ」? それ、「イスラム」に限ったことですかね。

カナダでの事件(←これについては今書いてます)を受けて、またぞろ「イスラム教は一部の過激派のおかげで穏健派が迷惑している」という一般的な言説を見るのだが、なぜそこでいちいち「イスラム教は」という話にしたがるのか、私には合点がいかない。「一部の過激派がとんでもないことをやらかす」のは、「イスラム教」に限った話ではない。

イスラム教のそれしか聞かないのだとすれば、おそらく単に情報網が狭いか、日本語圏では報道されていないだけだ。

例えば、わりと最近、アメリカでリバタリアンの「自警団」活動に身を入れていたカップルが、警官を銃撃して殺傷したことがある。……と、検索しようにもキーワードを忘れてしまっていて、一般的なワードでしか探せないので、情報にたどり着けない。どこで起きたのか、どんな組織名だったのかも覚えていない。そのくらい「薄い扱い」を自分でもしてしまったし、ニュースサイトなどでもそんな感じだ。20分ほどかかってようやく探せたのがこれ。



こんな程度で日本語にしてあったって、ここ経由ではたぶん誰も見てやしない(笑)んだが、こういうのを知らずに「イスラムだけがやるテロ」を語っちゃったりしてるのを見ると、正直、「怒り」に近い感情が生じる。

ともあれ、記事はこれ。読んでない人は読んでください。

Las Vegas cop killers may have white supremacy links: report
2014年 06月 10日 00:05 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idUSKBN0EJ0UQ20140609

The armed man and woman shouted about a "revolution" before opening fire and killing the two uniformed patrol officers, Alyn Beck, 41, and Igor Soldo, 31, who were eating lunch in a CiCi's pizza parlor, police said on Sunday.


ウィキペディアにはソースがたっぷり添えられている。
http://en.wikipedia.org/wiki/2014_Las_Vegas_shootings

で、あんまり表立って語られてないんだけど(「自警団」に関しては言わずもがなだから)、この「テロリスト」2人、バックグラウンドは「クリスチャン」。
http://www.reviewjournal.com/news/bundy-blm/rejected-revolution-jerad-and-amanda-miller-decided-start-their-own

ほか、参照。「パトリオット」運動(武装する権利ガーーーの人たち)に参加しており、アレックス・ジョーンズ(「911真相究明」など陰謀論をフき散らかしている人物)のサイトが情報源だったような人物。



こういうのは「アメリカの過激なプロテスタント」のすることで、他の宗派はそんなことはしないと言う人もいるかもしれないが、そういう人はバルカンについての本を読むといいと思う(バルカンなら全部まとまってるから)。カトリックも正教会も、「過激分子」の居場所となってきたし、「過激主義」を支えてきた。

図説 バルカンの歴史 (ふくろうの本/世界の歴史)図説 バルカンの歴史 (ふくろうの本/世界の歴史)
柴 宜弘

ユーゴスラヴィア現代史 (岩波新書) 終わらぬ「民族浄化」セルビア・モンテネグロ (集英社新書) バルカンを知るための65章 エリア・スタディーズ クロアチアを知るための60章 (エリア・スタディーズ121) クロアチア (地球の歩き方GEM STONE)

by G-Tools


バルカンの外では、カトリック教会とIRAとの関係もある。1972年7月末の爆弾テロは、神父(故人)が直接関与しているというのが今のところ最終的な結論だ(2010年に出た報告書)。
http://en.wikipedia.org/wiki/Claudy_bombing

キリスト教以外ではイスラエル軍の内部での宗教性もあるし、「宗教的過激主義 religious extremism」で語られる仏教徒の暴力もあるし、ヒンズー(ヒンドゥー)・ナショナリズム(ヒンズー至上主義)今のインドの首相はこのイデオロギーの人)もある。

どんな信仰の持ち主であろうと、あるいは信仰の有無にかかわらず、「暴力的な行為に走る」人物はいる。日本の社会は「宗教的ではない」ということになっているし、「宗教性」を前面に立てた犯行で「宗教過激派」と言われるようなことが起きることはめったにないけれど、「通り魔事件」が発生して、「誰でもいいから人を殺してみたかった」とかいう容疑者のコメントが出ても、驚く人はいないだろうに、「海外」のことになるとすぐに「宗教」の話にしたがる。(この「海外」という概念がまた曲者なのだが。)

いずれにせよ、基本的に「キリスト教圏」である英語圏では、こと「イスラームのこと」となると話が雑になる。




ティモシー・マクヴェイのことなんか、日本語圏では通じないもんね。
:-P

オクラホマ連邦ビル爆破をやった「社会から落伍した男」はアイリッシュ・アメリカンのカトリックで、一度信仰を捨てたが、死刑執行前にはカトリックの秘蹟を受けている。

そのマクヴェイをヒーロー/アイドル視している「白人のキリスト教徒の過激派」は少なくない。ノルウェーのオスロ爆弾&ウトヤ島銃撃事件のアンネシュ・ブレイヴィクもそのひとりだ。

そのノルウェーの事件のときも、発生当初は「イスラム過激派の犯行」って、世界中のメディアが(ロイターもBBCも)言ってたんだけどね。

「オスロ爆弾&ウトヤ乱射、死者17人」の日本語実況組のログ
http://togetter.com/li/164923


posted by nofrills at 22:00 | TrackBack(0) | i dont think im a pacifist/words at war
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おひとりおひとりに感謝申し上げます。


【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

……全文を読む

EXPOSING WAR CRIMES IS NOT A CRIME!


詳細はてなダイアリでも少し。