ノーベル賞:中村氏 研究の原動力は「怒り」

毎日新聞 2014年10月08日 04時48分(最終更新 10月08日 12時18分)

記者会見に応じる中村修二教授=米カリフォルニア大サンタバーバラ校で2014年10月7日、堀山明子撮影
記者会見に応じる中村修二教授=米カリフォルニア大サンタバーバラ校で2014年10月7日、堀山明子撮影

 青色発光ダイオード(LED)の開発で2014年のノーベル物理学賞に決まった中村修二・米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授(60)と天野浩・名古屋大教授(54)が7日、米西部カリフォルニア州サンタバーバラと仏南東部グルノーブルで記者会見した。2人は受賞決定に至るまでの厳しい道のりや研究成果の意義などを交えながら、率直な喜びと関係者への感謝を語った。

 中村氏は大学構内での会見で、研究の原動力について「アンガー(怒り)だ。今も時々怒り、それがやる気になっている」と力を込めた。青色LED開発後、当時勤めていた日亜化学工業(徳島県)と特許を巡り訴訟に至った経緯に触れながら、怒りを前向きなエネルギー源に転換してきたと強調した。

 中村氏は、自分の発明特許を会社が独占し、技術者の自分には「ボーナス程度」しか支払われず、対立したと改めて説明。退職後も日亜から企業秘密漏えいの疑いで提訴されたことが「さらに怒りを募らせた」と明かした。

 「怒りがなければ、今日の私はなかった」と冗談交じりに語り、「アンガー」という言葉を手ぶりを入れながら何度も繰り返した。

 一方で中村氏は、「感謝したい人物」の筆頭として、青色LEDの研究に投資してくれた日亜の創業者、小川信雄氏(故人)を挙げ、「私が開発したいという提案を5秒で決断し、支援してくれた。私が知る最高のベンチャー投資家だ」と述べた。また、「君はノーベル賞を取るべきだ」と教授に招いてくれたサンタバーバラ校の総長に謝意を述べた。

 会場には、日米の200人以上の記者らが詰めかけ、質問は日米の研究文化の違いに集中。「米国の研究者は、アメリカンドリームを追求する自由がある。技術者は起業もできる」と研究と企業が連携した米国の研究土壌を評価した。

 研究の成果については「LEDの省エネルギー技術で、温暖化の緩和に役立つ。太陽光パネルとLEDがあれば安上がりに途上国でも利用できる」と意義を語った。【サンタバーバラ(米カリフォルニア州)堀山明子】

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