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中国漁船がさんご密漁か 今週100隻超に
10月25日 16時28分

世界自然遺産の小笠原諸島沖で、中国漁船が貴重なさんごを密漁しているとみられる問題は、漁船の数が今週100隻を超え、海上保安庁などが対応に当たっています。

小笠原諸島沖では、先月以降中国から来たとみられるさんご漁船が多く確認され、日本の領海で違法に操業したとして中国人船長が逮捕されるなど、さんごの密漁が懸念されています。
漁船は当初20隻ほどでしたが、今週100隻を超えるようになり、NHKは24日午後、小型ジェット機で上空から現場の状況を取材しました。
母島の西およそ10キロの日本の領海内では、中国国旗とみられる赤い旗を掲げた漁船1隻が航行していました。
船の特徴から200トンほどのさんご漁船とみられ、甲板では5人ほどが何らかの作業を行っているのが確認できます。
船員は左舷に沿って横一列に並び、時折漁具のようなものを海に投げ入れ、海面に水しぶきが上がる様子が確認されました。
このほかにも複数の漁船が付近を航行していました。
また、父島の西の沖合では、23日に検挙した中国のさんご漁船を監視する海上保安庁の巡視船の姿も確認されました。
現場海域では、昼間だけでなく夜間も違法な操業が行われているとみられますが、増え続ける中国漁船に、日本側は、水産庁の漁業取締船も加わり、5隻前後で対応する厳しい状況が続いています。

狙われるさんご

宝石さんごとして取り引きされるさんごは、比較的深い海に生息し、国内ではごく僅かな水族館でしか展示されていません。
その一つ、静岡県沼津市の沼津港深海水族館は、アカサンゴとモモイロサンゴ、それにシロサンゴの3種類を展示しています。
このうち宝石さんごとして最も人気が高いアカサンゴは、業界団体の調べで、5年前は1キロ当たり平均でおよそ54万円だったのが、おととしはおよそ160万円、そしてことしはおよそ250万円に高騰しています。
また、モモイロサンゴも、5年前は1キロ当たり平均でおよそ18万円だったのが、おととしはおよそ30万円、そしてことしはおよそ43万円となっています。
沼津港深海水族館によりますと、これらのさんごは浅い海のさんごと比べて成長が遅く、例えばアカサンゴは、展示されているおよそ20センチほどの大きさに成長するまでに、何十年もかかるということです。

専門家 「中国での価格高騰が密漁の背景に」

中国漁船による小笠原諸島でのさんごの密漁について、さんごの生態や取り引きに詳しい立正大学の岩崎望教授は、中国での価格高騰が背景にあるとしたうえで、さんごの再生には時間がかかり、根こそぎ取られると、世界自然遺産の小笠原諸島の環境に大きな影響を及ぼすと懸念しています。
岩崎教授は密漁の背景について、「赤いさんごは幸運の証しとされ、中国の富裕層が宝石さんごを買い求めるため、特にここ数年、価格が高騰しているとみられる」と指摘しています。
また、なぜ小笠原諸島までやって来るのかについては、「中国ではパンダと同じレベルで保護され、漁が禁じられているので、日本に来て漁をしているのではないか。なかでも小笠原諸島では30年ほど本格的な漁が行われず、宝石さんごが多く残っているため、やって来るのではないか」と話しています。
密漁の影響については「日本のサンゴ漁船は5トンほどの小さな船だが、中国漁船は100トンほどと大きく、根こそぎ取っていくようなやり方のため、環境に与える影響は大きい。さんごは1年で0.3ミリしか成長せず、再生には20年から30年かかる」と懸念しています。
また対策について、岩崎教授は「日本政府も中国政府も、宝石さんごの資源保護という目標は一致しているので、国境を越えた管理や、互いに相談できる仕組み作りが急務だ」と話しています。

日本側の取締りは

中国から来たとみられるさんご漁船が、小笠原諸島で多く確認されるようになったのは、9月からです。
9月に20隻前後だった漁船は、10月になると、倍の40隻前後に増えました。
一時、20隻から30隻に減りますが、今週再び増えておよそ50隻に達し、今週後半には100隻を超えるようになりました。
このため、海上保安庁は態勢を強化していて、10月5日には日本の領海で違法に操業していた漁船の中国人船長を逮捕したほか、16日と23日には日本の排他的経済水域で立ち入り検査に応じず停船命令に従わなかったとして、それぞれの漁船の中国人船長をその場で逮捕しています。
一方現場では、増え続ける中国漁船に対し、日本側は水産庁の漁業取締船も加わり5隻前後で対応する厳しい状況が続いています。
中国のさんご漁船は、従来、中国により近い沖縄周辺で違法に操業していましたが、海上保安庁などが取り締まりに力を入れるなか、中国大陸から2000キロ離れた小笠原諸島周辺に漁場を移したとみられます。
この問題で、海上保安庁の佐藤雄二長官は、今月15日の会見で「巡視船などを集中的に投入し、特別な態勢で中国漁船の取り締まりを行っている。沖縄周辺で活動していた漁船が小笠原諸島に移動してきたとみられるが、領土問題とは関係なく、一獲千金をねらった違法な操業だとみている」と述べています。
また、太田国土交通大臣は24日の会見で、「漁場が荒らされ、住民から不安の声が寄せられている。水産庁とも連携して厳正に対処し、不安の解消に努めたい。また、外交ルートを通じ、中国側に注意喚起を行っている」と述べています。

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