原発ADR:議事「不開示」…担当弁護士を黒塗り
毎日新聞 2014年10月25日 07時30分
東京電力福島第1原発事故の賠償問題を裁判外で解決する手続き(原発ADR)を担当する「原子力損害賠償紛争解決センター」を巡り、所管する文部科学省がセンター最上位の組織「総括委員会」の議事録を公開していないことが、毎日新聞の情報公開請求で分かった。和解案を作成する仲介委員(弁護士)の一部についても氏名を明かさず、他の同種の公的機関と比べ閉鎖性が際立つ。情報公開制度の専門家は「極めて特殊な対応」と批判している。【高島博之、戸上文恵】
センターを巡っては、死亡慰謝料を「一律5割」などと定めた文書が存在するのに、国会議員が開示を求めても拒否するなど、情報公開に消極的な姿勢が批判を浴びている。
総括委は大谷禎男委員長(元裁判官)、鈴木五十三(いそみ)委員(弁護士)、山本和彦委員(一橋大教授)の3人で構成。賠償額の目安などを定める重要な「総括基準」を決めており、これまで基準の決定日と決定内容だけしか公開していないため、毎日新聞は決定の作成過程を検証するため、文科省に情報公開請求した。
文科省は議事録の存在を認めた上で、一切の公開を認めない「不開示」とした。一部を黒塗りにして開示する「部分開示」ではないため、3人の発言内容だけでなく、実際に委員会は開催されたのか▽開催されたのならその日時と場所▽出席者▽議題−−など、すべて検証できない。不開示理由について、文科省は(1)率直な意見交換や意思決定の中立性が不当に損なわれる(2)国民に混乱を生じさせる(3)手続きの適正な遂行に支障が及ぶ−−などを挙げた。
センターは和解案を作成する仲介委員282人(退任者を含む)の氏名についても全面開示をしていない。毎日新聞が東電との利害関係の有無を調べるため、氏名の公開を求め情報公開請求したところ、文科省は「個人情報」を理由に、名前や経歴などをすべて黒塗りにした文書を開示した。一方、センターの対応は一貫性を欠いており、ホームページで和解事例を紹介する中で202人の仲介委員名を付記している。それでも残る80人の氏名は分からないままだ。