中国共産党の最高指導機関である中央委員会の第4回全体会議が開かれた。4中全会と呼ばれ、主要テーマは「法にもとづく国家統治」だった。

 行政や司法の信頼性を高める改革は歓迎すべきだが、そこに込められた真の狙いは、共産党の一党支配をより強固にすることとみるべきだ。

 発表されたコミュニケは、法体系のいっそうの整備、人材育成などを含め、幅広く課題を挙げている。中国の問題状況を直視したものと言っていい。

 注目されるのは「幹部による司法への関与、介入を責任追及する制度を設ける」と明記した点だ。地方の党・政府幹部が事件の捜査や裁判に口出しをし、身内や業者に便宜を図ることが横行しているからだ。

 行政機関についても、責任追及の仕組みづくり、住民参加、情報公開などを今後の方針として盛り込んでいる。

 各地方の行政、司法は、権利意識を高めつつある住民とじかに接する部分でもあるだけに、習近平(シーチンピン)指導部としては重視せざるを得ないところだろう。

 中国は建国後、幾たびの混乱をへて、70年代末に本格的な法整備が始まった。以来、政府機関での手続きや裁判所の対応が少しずつ改善されてきた。

 それがさらに前進するのであれば、中国の国民はもちろん、中国で活動する外国人、外国企業にとってもプラスになる。

 だが、この法治をめぐる改革は、党中央が地方の隅々まで統制しなければならない、という点にそもそもの目的がある。コミュニケは「党の指導の堅持」を繰り返し強調している。

 では党中央は、つねに清潔で正しいといえるのか。それはどう担保されうるのか。その答えは示されていない。

 習指導部のもとで、最高指導部メンバーだった周永康氏ら多くの党幹部が「党規律違反」として取り調べを受けている。周氏の側近らは今回の会議で党籍奪(はくだつ)処分が決まった。

 前例のない反腐敗キャンペーンは、党の自浄能力を示すとしている。だが、それはむしろ、最高指導部の権力が腐敗と結びつきやすいことを物語る。

 疑問はまだある。習氏は一昨年の演説でも「憲法にもとづく法治」をうたった。しかし、憲法に明記してある諸権利の保障を訴える市民を次々と拘束し、投獄している現実をどう説明するのか。

 一党支配システムの堅持と、真の法治はそもそも両立しえない。いまの中国が抱える矛盾の根源はそこにある。