メニュー:Day Watch | 2014.10.22 Wednesday
魔法の国で何が起こっているのか? 東京デイズニーリゾートに異変の予兆が
JCSIの調査は、サービス業の業績を予測する先行指標である。2014年度の顧客満足度調査で、昨年度トップだったTDR(東京ディズニーリゾート)が劇団四季にCSで追い越された。しかもCSスコアが、86.8点から82.7点へ、4点の大幅な落ちこみである。魔法の国で何が起こっているのだろうか?
JCSI(エンタテインメント部門)の上位3社、3年分の顧客満足度(CS)を表示する。82.7点は、最高の得点ではある。ただし、これまでの経験から、一年間で5%の落ち込みは尋常ではない。
TDR 劇団四季 宝塚歌劇団
2012年 85.7 86.2 79.6
2013年 86.8 86.1 82.8
2014年 82.7 84.6 82.1
他の2社の顧客満足が、特別に上昇しているわけではない。2社ともに創立から節目の年にあたっている。しかし、CSは前年並みである。どちらかといえば、TDR(東京ディズニーリゾート)のCSが落ちたのである。
「非日常の世界」で、何かが起こっているらしい。わたし自身、いくつかの仮説を持っている。そこで、数日前からブログのアンケートで、この一年間でのTDRを来訪したひとたちの経験をたずねてみている。リサーチの結果は、ほぼ予想通りである。分析結果を、このあとで解説することにしたい。
理由はいくつかあるのだが、基本的には、「イールド・コントロール」の問題であると考える。別名で、「マクドナルド症候群」と呼ばれる現象である。日本マクドナルドのCS低下を例にして、CSが落ちていくロジックを説明する。
すべての引き金は、顧客満足を犠牲にして、売上と利益を取りに行くためである。TDRとマクドナルドに共通しているのは、その背後に米国本社の意向(都合)があることだ。つまり、米国から見ると日本は大事な収益源になっているために、現地の事情をよく知らずに、数値(売上と利益)だけで日本事業をコントロールする傾向があることである。
本社のゴール設定は、(対前年比での)集客数や最終利益になる。となると、まずは、テーマパーク内の「混雑度」が無視される。本当はイールドコントロール(操業度:キャパシティにあわせた入場制限)をすべきところが、収益を重視する本社の意向で、「バルブ」を閉めることができなくなる。
TDLの開園のころに行った経験では、むかしは長い間並ばないと乗り物に乗れないことはなかったはずである。
常軌を逸した混雑の結果は、接客従業員であるキャストの対応がおざなりになることである。やりたくても、もはやサービスができない。そして、場内の施設、たとえば、乗り物やレストランの待ち時間が長くなる。そして、時間帯によっては乗れない顧客が出てくる。
さらに悪いのは、ファストパスが奪い合いになったり、乗り物などで優先権がある「プレミアムツアー客」などが優先される。そのために、どちらも持っていない一般客(いまや半数)が置き去りにされる。日本人は、たとえ金を払っていても、特定の客が差別的に優遇されることにはとてもきびしい。
そして、もう一方の問題は、コスト削減である。たとえば、たとえ行列が長くても、そこに「所在なさ」を紛らわしてくれるパレードが来たり、パフォーマンスがあれば、列待ち客の気分はまぎれるだろう。待ち行列をそれほど気にもかけない。
しかし、数十億円単位で、そうした人員に対する人件費がカットされている、という話を聞いている。大丈夫なのだろか?心配になる。
マクドナルドのCS低下の最大の原因は、利益が欲しいために、店舗のキャパシティ以上に客数を増やそうとしたことである。メニュー表の撤去や、60秒キャンペーンもそのための方策だった。
米国本社は、売上高の3%を得ているから、売上が増えればうれしい。また、マクドナルドのカナダとシンガポール(株を50%保有)は、配当で利益を上げている。
しかし、サービスが劣化し、店舗が汚れ、居心地がよくなくなった。これが、まさに「マクドナルド症候群」である。あれほどCSが高いTDRで、それが起こりそうなのだ。いまならば、対応は遅くない。バルブはきつく閉めるべきだ。しかも、日本人の手で、、、