“セコンド”が割って入って試合終了=20日午後、大阪市役所

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 「ヘイトスピーチ」と呼ばれる人種差別的な街宣活動への対策に絡み、橋下徹大阪市長(維新の党共同代表)は20日、「在日特権を許さない市民の会(在特会)」の桜井誠会長と大阪市役所で激突した。しかし、繰り広げられたのは子供のケンカのような「罵声合戦」で、議論が深まることはなかった。

 橋下氏は市としてのヘイトスピーチ対策を検討する意向を示し、9月、市がとるべき方策を市人権施策推進審議会に諮問。併せて、在特会側と面談し「大阪で差別表現することは許さないことを伝える」と話していた。対談は在特会側の申し入れで実現した。

 庁内の一室で、約3メートルの距離を置いて向かい合った両氏。しかし、対談は冒頭から互いを罵(ののし)る言葉のぶつけ合いになった。

 桜井氏「まずねぇ、いろいろと言いたいこともあるんですけれども、ヘイトスピーチについてお伺いできます?」

 橋下氏「いや、僕の意見を聞くんじゃなくて…」

 桜井氏「いや、アンタが言い出したことだろ!」

 橋下氏「『アンタ』じゃねぇだろ!」

 桜井氏「『オマエ』でいいのか? じゃあ、あのね、まず、あなたがヘイトスピーチうんぬんと言い出したから…」

 橋下氏「大阪で、もうそういう発言はやめろって言ってんだよ」

 桜井氏「じゃあ、どういう発言なのかって聞いてんだよ!」

 その後も議論はまったく深まらず、罵声の応酬だけが繰り広げられた。

 桜井氏が「たかが地方の首長ごときでふざけたこと言うなよ」と声を荒らげ、橋下氏が「じゃあオマエ、立候補して当選してみろよ!」と挑発に乗る場面もあった。

 最後は、橋下氏が「もう終わりにしましょうか」と対談打ち切りの意向を示し、「帰れ、帰れ」。桜井氏は「みっともねえったらありゃしないよ、この男は。言い逃げかい? はい、さいなら」と言い返し、橋下氏は「大阪に来んなよ」と手で払いのけるしぐさをしながら吐き捨てた。対談時間はわずか10分足らずだった。

 政治評論家の浅川博忠氏は「橋下氏の本質ともいえる『タレント弁護士』の部分がにじみ出ていた」と印象を語り、こう続ける。

 「橋下氏は、戸別訪問を繰り返し、地道に知名度を上げてきたような政治家とは違い、『この発言はうける』といった感覚だけでのしあがってきた人物。そのおごりが垣間見えた。『大阪都構想』も尻すぼみ状態で、新たな話題を作ろうという思いもあったのかもしれない」

 在特会と同じ土俵に乗ってしまったようだ。