何事も過剰摂取は禁物、
腸のバランスが崩れて糖尿病に

「ネイチャー」人工甘味料論文の衝撃(後篇)

2014.10.24(Fri) 漆原 次郎
筆者プロフィール&コラム概要

 9月に発表された、イギリスの科学雑誌「ネイチャー」の論文が議論を呼んでいる。糖分摂取を避けたい糖尿病患者や肥満の人などが摂ってきた人工甘味料が、逆に糖尿病リスクを高めるという研究結果が示されたからだ。

「ゼロカロリー飲料」の原材料名表示に並ぶ人工甘味料

 前篇では、この論文をどう捉えればよいのかを、城西大学薬学部教授の中島啓氏に尋ねた。中島氏は生活習慣病の実験研究の第一人者で、人工甘味料が体に及ぼす影響も研究対象にしている。結論は「少量摂取なら問題ないだろうが、かなりの量を摂取していれば、影響の個人差もあるので健康診断を受けるとよい」というものだった。

 結論が出たところで、後篇では、今回の「ネイチャー」論文で取り沙汰されている、腸という器官に焦点を絞ってみる。論文には、人工甘味料が腸内細菌のバランスを崩すことで、糖尿病のリスクを高めるといった内容が書かれている。

 糖尿病というと、糖をエネルギーに変える糖代謝が異常をきたすために起きる病気だ。いったい腸内細菌が糖尿病とどう関わっているのだろうか。さらに詳しく、中島氏に聞いてみた。

細菌、酵素・・・腸内物質が代謝系の病気に関与

――今回の「ネイチャー」論文では、人工甘味料の摂取により腸内細菌のバランスが崩れることで糖尿病リスクが高まるとされています。腸内細菌と糖尿病の関係は研究者たちに注目されていたのでしょうか?

中島啓氏(以下、敬称略) ええ。腸内細菌が糖尿病や肥満といった代謝系の病気に影響を及ぼしているということは、10年ほど前から言われていました。腸内には何百種類もの細菌がいると考えられており、それらがなんらかの形で代謝の異常に関与しているのです。

この連載記事のバックナンバー
トップページへ戻る

漆原 次郎 Jiro Urushibara

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。


食の安全に対して国民の関心が高まっている。国民が健康を意識しているのはもちろんだが、今後、安全で美味しい食の供給国としての日本を考えた時にもこの問題は重要になる。このコラムでは、日本や世界における食の安全への取り組みを様々な角度から取り上げていく。