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AniFav スペシャルの一覧へ戻る 更新日:2013年09月15日 20時46分

総力特集! アニメ『ゆゆ式』(6)――プロデューサー・小倉充俊 インタビュー 「『ゆゆ式』は言葉にならない、でも"じわじわ"くる」(後編)

ライター:
高瀬司(聞き手・構成)、前田久(聞き手)

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総力特集! アニメ『ゆゆ式』(6)――プロデューサー・小倉充俊 インタビュー 「『ゆゆ式』は言葉にならない、でも

【インタビューの前編はこちら】

【インタビューの中編はこちら】 


■アニメ『ゆゆ式』を支えるこだわり

――作品の具体的な内容や演出にも踏み込みたいのですが、小倉プロデューサーがこだわられたシーンというとどういったところになるのでしょうか?

小倉:演出はあくまでかおり監督やスタッフの皆さんのお力ですが、僕の方ではシナリオや絵コンテ段階でいくつかポイントだけお願いさせてもらいました。例えば、第1話でいえば情報処理部の部室を初めてガラッと開けるシーンは大事にしたいねと最初から皆で話していたんです。ゆずこが「いい狭さ!」って言ってくるくる回ったりしますけど、あそこはただ部室に入ったというだけのシーンではなくて、彼女たちがこれから3年間青春を過ごす場所と、初めて対面したシーンなんですよね。

『ゆゆ式』んぱんぱ――なるほど、部室との出会いを描くシーンだったわけですね。実際、非常に印象深いカットになっていたと思います。

小倉:原作同様、いきなり始めるって案もありましけど、ドラマとしてちゃんとやる方針なら、こういう部分も丁寧にやろうということになりました。だから部室と出会う前にも、部員募集のポスターを見つけるシーンをオリジナルで追加したり、情報処理部の成り立ちに関してはなるべく丁寧に描くようにしましたね。ああいう所で最初にポスターに気付くのは誰だろうとか、そういう議論もしてました。
 3話で唯の家から帰ったゆずこと縁のシーンもよかったですね。原作だと唯が電話してるカットで終わりなんですが、その電話の向こう側を描こうとか、会話のその先っていうのはこの作品では意識したところです。しかもあのシーンの楽しげさは、縁がいない時の喪失感への伏線にもなっていますし。
 あとオリジナルと言えば第10話のアバン。原作には登場しない、ゆずこたちが「んぱんぱ」って音だけで会話するネタをやりましたけど、実はこれ、三上先生ご本人が考えられたものなんですよ。三上先生が「アニメで使えないですか?」といって、描き下ろしの4コマを送ってきてくれたんです。

――それは貴重な! 音ネタなのでマンガよりもアニメに適しているから、ということですね。またアニメ的と言えば、キャラの些細な動きにこだわった作画が目を引きました。

小倉:例えば縁は会話してるときよく手をいじってるんですけど、そういう指の芝居なんかもすごく丁寧にやってくれてて、本当にありがたかったですね。第4話で唯が教室で眠くなってて、向かいに座っている縁がいじろうとするんだけど唯の方がパシパシと手で防ぐシーンなんかも、なにげない所で普通では考えられないくらい動かして、手でちゃんと芝居をしてくれてる。

――細かいシーンもリッチな作りになっていたことには、何か理由はあるのでしょうか?

小倉:田畑さんはじめスタッフの皆さんが頑張ってくださったということに尽きると思います。
たとえば、原作にある縁の姿勢を描こうとするとして、机の上に伸びるように伏せているシーンでは、そのポーズにたどり着くまでに、普通にまっすぐ座った姿勢から伸びていく動作を描く必要がある……理屈ではああした動きになるんですが、省略しようと思えばできてしまうところを、原作の1コマのポーズから次のポーズへと移る過程を端折らずに、キャラクターのらしさを丁寧にやってくれている。
 そうした些細な描写の積み重ねが、『ゆゆ式』のネタものじゃない女の子たちの日常というイメージを支えているんだと思います。

――細部に渡る所作も、作品に自然な流れを導入する工夫の一環としてあるわけですね。

小倉:そうですね。あと流れという点では、一日の時系列や感情のほかに、季節が流れていく感じも大事にしています。そのためエピソードごとに衣装が変化してて、第1話は長袖ですけど、第2話ではもう夏服で、さらに第3話は夏休みなので私服と、最初っから同じ衣装が全部変わっています。

――もう一つ絵作りで印象的だったのはレイアウトに関してです。最近のコミック原作ものでは、原作の構図を引き写したカットを多用する作品もありますが、『ゆゆ式』は原作とシチュエーションは同じでも、アングルは違うものになっていることが多いように感じました。

『ゆゆ式』変わった構図小倉:『ゆゆ式』の場合、ほとんどのシーンが女の子3人がしゃべっているだけなので、極端な話をすれば、3人がフレームに入ったレイアウトが続く可能性だってある。でもそれではつまらないので、レイアウトは意識的に変えていくようにしようと監督たちと相談しました。「このカットは誰の目線なのか」とか、誰が誰に対して語っているのかによって、ベストアングルが変わってくると思うんですよね。

――Aパート全てが教室での会話であったとしても画面に飽きないよう演出されていると思いました。

小倉:そう感じていただけてるとうれしいですね。教室の描写に関しても実はかなり取材をしてるんですよ。学校の教室を借りて、実際にモデルの方にゆずこたちと同じように座ってもらって、ゆずこの目線から座っている女の子を見るとどう見えるかとか、唯の目線からはどうかとか、そうした様々なアングルや配置を確認しました。実際にはアニメでどこまで生かせたかはわからないですけど、そういう姿勢というか、過程って大事だなと。

――そこまでこだわったロケハンというのはすごいですね。

小倉:それこそ、「セーラー服の女の子が伸びをしたらどのくらいヘソが見えるんだろうか」みたいなことまで(笑)。

■じわじわ『ゆゆ式』

――最後に改めて作品全体を振り返ったコメントと、今後の展開などを伺えれば。10月にはファンイベントも開催されますが。

『ゆゆ式』情報処理部小倉:メインキャストの3人は、ダンスレッスンや取材も一生懸命に取り組んでくださるんです。作品のことをすごく愛してくれていて、本当に頭が下がる思いです。『ゆゆ式』のステージイベントはこれまでも何度かやってきていますが、彼女たちの頑張りやキャラとのシンクロ感があれば、間違いなく次もお客さんに満足してもらえるイベントができると思います。
 同時に僕らの方でも、お客さんとちゃんと向き合ったイベントにしなきゃいけないと考えています。さきほど「『ゆゆ式』は人間関係のお話でもある」といいましたけど、僕ら自身も『ゆゆ式』を通じて、作品を支えてくれているファンの皆さんに対して何をお返しできるかが大切なんだと常に思っています。

――一ファンとして非常に楽しみです。それにしても、お話を伺っていると、本当に現場の空気の良さを感じさせられますね。

小倉:そうですね。みんな『ゆゆ式』が好きというか。やっていくうちに、どんどん『ゆゆ式』愛が高まっていくのを感じます。
 『ゆゆ式』について、ナツコさんはよく「言葉にならない部分がすごく多い」と言っていて、田畑さんは「じわじわ感」という表現をよく使うんです。そうしたら、現場のスタッフもみんなだんだんと、「よくわかんないんですけど、じわじわ来るんですよね」と口をそろえて言うようになってきていて(笑)。
 言葉にならない、でも観ているとじわじわ来る。
 実際、視聴者の方からも、「観ているうちにこの作品の楽しみ方がわかった!」という感想をいただきましたが、話数が進むにつれて徐々に『ゆゆ式』愛を高めてくださっているような感覚ですね。
 今回のアニメで目指したのは原作の雰囲気を活かすという難しいミッションでしたけど、観てくださった皆さんに「じわじわ感」を感じとってもらえていれば、作品として一つの目標を達せられたんじゃないかと思います。(了)

(2013年6月11日、赤坂・ジェネオン・ユニバーサル・エンターテインメントにて収録)

『ゆゆ式』特集の導入コラムはこちら

『ゆゆ式』シリーズ構成・高橋ナツコさんインタビューの前編はこちら
『ゆゆ式』シリーズ構成・高橋ナツコさんインタビューの中編はこちら
『ゆゆ式』シリーズ構成・高橋ナツコさんインタビューの後編はこちら】 
『ゆゆ式』キネマシトラスさん取材記事の前編はこちら】  
『ゆゆ式』キネマシトラスさん取材記事の後編はこちら

©三上小又・芳文社/ゆゆ式情報処理部

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