Talking over with you, the wise.

エンジンプラス10周年を記念し、
これまでお世話になった「広告界の賢人」に弊社スタッフがお話を伺って参りました。

 

それまでの手続きをとばす方法として、お祭りというのは有効


EP2:
次に聞いてみたいのが、「何をする」のほうじゃなくて「どうやって」「どのように」という部分なんです。ある種の、演じる部分といいますか。
例えばXの仕事をやるときに、僕はほんと、あれは衝撃的だったけど、当然Xの人はXらしく振る舞う。さっきの保守の話ですよね。その振る舞いでもって、ライバルY社に勝たなければならないと思ってたはずなんです。
だけど、岡﨑さんは、ガチンコでさしでやるときは、YみたいにXが振る舞えば詰将棋的に言うとYに手はなくなるわけだから、そうすればいいじゃないですかって。
それときっと関係あるかなと思うんですけど、お仕事の中での説明なんかに、映画からの援用とかドラマからの引用とかの使用。それはものすごくそもそもの引き出しがあるからだとは思うんですけど、ああいうのって。岡﨑さん、あれはほんと一種独特ななんていうか…うーんと、なんですか?(笑)
岡﨑:
やっぱり、ほら、俳優って学士じゃないですか、海外だと。ある種の技術でしょ。
EP2:
はい、そうです。
岡﨑:
劇的欲求ってね、主人公が変わっていく、主人公が何かになるという。それから観客がそれを見て、それに共鳴して何かが変わったような気がするという、状況が変化する中で、その中にいる奴と外から見てる奴が変わった気がするということは、僕らからするとものすごい、プレゼンテーションもそうだし、実際にやってる仕事でも、もうそこで確立してる技術というのは完全に使えるものなんですよね。
アカウントプランナーの能力、クライアント側の技術を理解することもそうだし、その社風とか、DNAとか、そういうことは理解することと、あと向こうもこっちを巻き込まなきゃいけないと完全に共有、共鳴して成り変わんなきゃいけないです。
EP2:
うーん、そうか。
岡﨑:
その方法は本当に俳優と同じなんです。だから僕もメソッド演技のプロセスとか熟知してるし、甘酸っぱい飴なめてコーヒー飲んだ体験を自分の体に今インストールしてみたいな、ああいうのと同じで。そのままそこに入っていかないと、それを掴めないと駄目なんですね。
EP2:
なるほど。そういうとこあるんですね。
岡﨑:
それを今度掴んだ上で自分も舞台の中に入っちゃって、誰が観客とかわかんないような状況のなかで事態を動かしているというようなことをするための構築の仕方。それが映画の…プレゼンの序破急とか起承転結とか…で作り上げ方は、僕は完全に映画の、いわゆるハリウッドの一般的な映画に使われる骨格を使います。時間の配分やケース。
EP2:
ほんとに細かいとこまでそうですよね、岡﨑さんて。
岡﨑:
そうやって作っていく。それは僕はそう思ってます。それでうまくいってるんで。
EP2:
効果があるんでしょうね。
岡﨑:
そうですね。お客さんは観客でいながら自分が主人公でいるような気がして、終わったときに何か変わった気がするんですね。
EP2:
いい例で、岡﨑さんが昔やったTV番組のコンセプトプレゼンのときに、向こうの役員がそのプレゼンV見て、グッときて泣いてるっていう…。それくらいのクオリティのもの作っていた。そもそも関係ない人が見てても、「よーし!」と思うものになってたから。だけどそれは感覚的にクリエイティブな人が作ってるのとはまた絶対に違うんですよね。そこがすごい。
岡﨑:
たとえば昔フルカワさんたちと一緒につくってた直観的なプレゼン映像とかを、もっと体系的に、鉄板なソリューションプランニングの流れと照らし合わせながら作っていくということをしてました。そこは裏にちゃんとそういう構造があるというか。
EP2:
そうなんです。
EP1:
そうですね。
岡﨑:
例えばさっきの話で言えば、dreamっていうコトバひとつにしたって ホンダとソニーとトヨタじゃ天地ほど違うということがはっきりわかってて、そのことでちゃんと映像を作るんだから。
 
EP2:
作り手側のイメージの体現のために作ってるんじゃなくて、クライアントと共有するとか同じ体験をさせるとか、あるいはそれをやりながら、岡﨑さんがそもそも作ってるジェットコースターにのレールに乗せるという為にやってるんだなということが、よくわかります。
だからあのセイコーのMの仕事なんかで同じ大きなお金の使い方をするにしても、本当にソリューションの為にセスナで島まで一緒に行くというのは、非日常であると同時に、それがどんどんこのMというブランドを体現していくことになり、そこから帰ってきて、相当飛んだような企画がまた岡﨑さん側からきたとしても、もうお得意としては「あれか」と受け止めることができるようになる。「あの女ね」みたいなことになるわけですよね?
岡﨑:
だって最終的にビデオに増山江威子さん(注1)、使いたいって向こうが言い出したんだからね。最後は。
EP2:
うわー、なるほど。
岡﨑:
あのときに、あんだけ異常な時差の中で動いていくなかで、時計という意味をお得意は考えたんだと思う。時間の意味とかも考えたし。それってちょっと演劇の世界のさ、ある種の。
EP2:
わかります。
岡﨑:
トレーニングとかの手法とちょっと近いところがあるじゃないですか。それは絶えずやっぱ意識する。だからその方法でそういう体験をしてしまえば。体験はもう理屈抜きじゃない?
EP2:
そうなんですよね。
岡﨑:
主体性に基づくものだし。
EP2:
一番強いですね。
岡﨑:
そう。その領域に入ってしまえば、その人たちが意思決定者なら、もう何の問題もない。
だから、それまでの手続きをとばす方法としてそういうお祭りというのはとっても有効なの。要するに、お祭りだから、とかいう。無礼講だしとか。
EP2:
確かに。
岡﨑:
結局さ、写メールっていうのが流行ったのって日韓ワールドカップのときからだったのね。携帯で写真撮るというのはそれまでなかった。カメラ没収されて、でもスタジアムに行って、もうキックオフの瞬間にフラッシュがたかれた。あそこから始まってるからね。それまでは、携帯で写真なんて、ってみんな思ってた。
啓蒙というのは本来広告が苦手とするものでしてね、広告のチカラっていうのは、もともと何処かに溜まってるガスみたいなやつ突いてやるということ。下心を刺激して、その力で押し流すというのが広告の力学だと思うんで、風の吹いていない場所とかで、それまでの行動を変えさせる、習慣を変えさせるというのは非常に難しいわけ。
それに最も適してる方法としてお祭りの力をぶつけた。お祭りはまったく普通の世界と違った天地逆とか昼夜逆とか、そういうことが起きる。そのときにそれを肯定的に捉えられるかなり珍しい瞬間で、
EP2:
理屈抜きで肯定的に。なるほどです。
岡﨑:
そのときに刷り込んでしまうという手はものすごく有効で、XXXXXX…

と、ここでまた、現在進行中のお祭り的プロジェクトの例を聞かせていただきました。でもオープンにできないケース事例なので、ちょっとはしょります。

EP2:
そりゃお得意は「これは!」ということになりますよね。
岡﨑:
そう、そう、そう。「行け!」って感じになる。それはキリンだってそうで。
EP2:
はい。
岡﨑:
「自分たちは日本代表のスポンサーだけど、でもワールドカップのときにはワールドカップのことは言えないんですよ」って言ってて。
EP1:
懐かしいです。
岡﨑:
懐かしいでしょ。それで、まずキリンの勝ちTをアディダス製にして、
EP2:
そうなんです、うん。
岡﨑:
それから、アディダスからキリンカップのときの試合球をそのときのJリーグの公式球にしていいですかという応諾を取り、それで撮った写真をワールドカップの直前、ファイナルドロー後に出したりすると、それはスーパーノヴァ(ワールドカップ公式球の愛称)=いわゆる試合公式球が全部公式球だから、まるでワールドカップの広告に見えてしまうとかさ。
それから、勝ちT作ってトルシエがさ、「必勝!トルツエ」(注2)とか書いてあった文字があって。これ見て最後キリンの人が「これで新聞十五段作りましょう」と言った。
EP2:
ほんとね。
岡﨑:
あんなに堅いお得意様だったのに。
EP2:
キリンの勝ちTは今はあれ、当たり前っぽくなってるじゃないですか、あのパターン。でもあれはあのときですよね。
岡﨑:
一番最初は広報が権利持っていて、社会貢献のためにやってるから、キリンカップの試合の当日に5段とかで集合写真があるだけだった。それを応援旗やって、勝ちTというとこまで持ってきて。要は広報の権利だけども、マーケティング事業のほうが受益するという仕組みに突破したのは、それには3年かかったよ。そのことでとんでもないダイナミズムが生まれて、今はスポンサーシップはホールディングスが管理してる。
EP2:
ほんとにそうですね。
岡﨑:
そうでしょ?そういうところってさ、見た目クリエイティブじゃないわけ。クリエイティブじゃないというか、いわゆるクリエイティブ局はやらない。わかんないから。マーケもできないわけ。
EP2:
表現を、というよりも、ほんとにクリエイティブの字義通り「仕組み」をクリエイティブするときがありますよね、岡﨑さんね。
岡﨑:
それが一番凄みがある。それに対しては敵は絶対勝てないからさ。短期的には。