熊本大は23日、同大先進マグネシウム国際研究センターの河村能人[よしひと]教授が開発した金属材料「KUMADAI超急冷耐熱マグネシウム合金」の民間航空機での実用化を目指して、米航空機大手のボーイング社と共同研究協定に調印したと発表した。
協定に調印後、握手する熊本大の谷口功学長(左)と米ボーイング社のジェリー・ヤング役員=22日、熊本市中央区(熊本大提供)
共同研究では、同社の意向に合わせて同大が合金の配合などを調整。国内のメーカーが材料を作り、同社が加工や接合の技術を開発する。同社は2020年から次期航空機の開発を始めることを明らかにしており、これに合わせて機体の骨組み部分などでの実用化を目指す。
河村教授によると同合金は、マグネシウムに亜鉛とイットリウムを加えて高温で溶かした後、急速に冷やして製造。航空機に使われるアルミニウム合金「超々ジュラルミン」に比べ3割軽いにもかかわらず、強度は5%上回る。最大で機体を1割ほど軽くする効果が見込め、燃費向上につながるという。
同社は11年に熊本大へ共同研究を打診。共同研究は今年5月にスタートした。協定の調印式は同社のジェリー・ヤング研究開発担当役員らの来熊に合わせて22日にあり、河村教授や谷口功学長が出席した。
マグネシウムは実用金属で最も軽いが、熱に弱い。このため米連邦航空局(FAA)は民間航空機への使用を禁じてきたが、同大の合金はFAAの燃焼試験をクリア。近く使用が解禁される見込み。
会見で河村教授は「民間航空機で実用化して、国内の航空宇宙産業の発展へつなげたい」と話した。(鹿本成人)
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