Gautam Mukunda
ハーバードビジネススクール助教授。専門は組織行動。MBAプログラムにて1年目必修科目である「リーダーシップと組織行動」を教えている。リーダーシップ、国際関係論、技術革新の政治・社会への影響を専門に研究。元マッキンゼー・アンド・カンパニーのコンサルタント。近著に"Indispensable: When Leaders Really Matter," (Harvard Business Review Press 2012).
2012年に著書『インディスペンサブル』(原題)を上梓したハーバードビジネススクールのゴータム・ムクンダ助教授。リンカーン、チャーチルなど過去のリーダーを検証し、リーダーは代替可能な人(=ディスペンサブル)と代替不可能な人(インディスペンサブル)の2つに分類されると結論づけた本が話題を呼び、英BBC、米CNBC、ワシントンポストなど、多くのメディアでとりあげられた。『イノベーションのジレンマ』の著者として有名な同校のクレイトン・クリステンセン教授は、「これはすごい本だ。この本を読んで自分があまりにもリーダーの選抜方法について単純に考えてきたことが分かった」と絶賛したほどだ。
ムクンダ助教授に、著書『インディスペンサブル』、日本のリーダーシップ、授業「リーダーシップと組織行動」について話を伺った。
ヒトラーがいたからチャーチルが評価される
ムクンダ:アメリカの元海軍大将、ハイマン・リッコーヴァー(1900-1986)が潜水艦の艦長を選ぶとき、「君が優秀であるかよりも運がいいかどうかが重要なのだ。運が悪い人は艦長として失格だ」と言ったのは有名です。
歴史的に見れば、運がいいかどうかというのはとても重要なのです、例えば、ウィンストン・チャーチルの人生を見てみれば、明らかです。チャーチルはヒトラーに対する政策が評価され、名を残しました。しかし、実はその他の政策はあまりうまくいかなかったのです。つまり、ヒトラーがいなければ、後世の人たちは、チャーチルのことなど知る由もなかったのです。
佐藤:自分ではコントロールできない「運」は別として、何か私たちが模範にできる特性はありますか?
ムクンダ:世の中には優秀で正直で勤勉な人というのはたくさんいます。その中で最高のリーダーになるには、並外れた自信と並外れた謙虚さを同時に兼ね備えている必要があります。「皆、これは間違っているというが、私は正しいと思う。だからやりきるのだ」という自信。そして、「皆、これは間違っているという。なぜだろうか。彼らの意見から学ぶところはないだろうか。彼らが正しいのであれば、方向転換しなくては」と、自分とは異なる意見に耳を傾ける謙虚さ。
自信と謙虚さの両方をバランスよく持っている人が偉大なリーダーとなるのです。どちらか片方を持っている人は多いのですが、両方を兼ね備えている人というのはなかなかいません。
その2つを兼ね備えた上で、「成功する道があると思ったら見つかるまで探し続ける」のが偉大なリーダーの特徴です。