経済産業大臣が小渕優子氏から宮沢洋一氏に交替となりました。しかし、原発再稼働の方針は変わらないため、これから年明けの川内原発再稼働までは、また原発論議や反対運動が盛んになるでしょう。その際、福島第一原発の事故ばかりが言及されると思われますが、女川原発が示した教訓も大事ではないでしょうか。機会があって女川原発の内部を見学して、つくづくそう思いました。
● 女川原発と福島第一原発の決定的な違い
女川原発は東日本大震災の震源地から130キロしか離れていませんでした。福島原発よりも女川原発の方が震源地に近かったのです。だからこそ、地震加速度は女川の方が福島より大きかったですし、女川原発周辺では1メートルも地盤が沈下しました。また、原発に押し寄せた津波の高さは、福島も女川も同じ13メートルでした。
即ち、女川原発は福島第一原発と同じかそれ以上の揺れと津波に教われたのですが、それにも拘らず、すべての原子炉が設計どおりに自動停止し、原子炉や使用済燃料プールを冷却する機能も守られました。さらに言えば、女川原発では、原発サイト内の体育館が避難所として被災された地元の人に提供され、最大で364名の被災者を受け入れました。
どうして福島第一原発と女川原発で震災後にこのような違いが起きたのでしょうか。最大の要因は、女川原発の敷地の高さを14.8メートルにしたことです。女川原発を建設した当時、津波の高さの想定は3メートルだったのですが、文献調査で貞観津波(869年)、慶長津波(1611年)など過去の津波を考慮し、それだけの高さにしたとのことです。
その他にも、電源喪失が起きないように高い場所に電源を置く、原発の管理棟の古いビルに耐震補強工事を行なうなど、考え得るあらゆる安全対策を講じてきたからこそ、女川原発はあの震災を耐え抜いて事故を起こさずに済みました。実際、1984年に女川原発が運転を始めて以降、2010年までになんと6600ヵ所の耐震工事を行なったそうです。
だからこそ、2012年夏に現地調査を行なった国際原子力機関(IEA)が「女川原発は震源からの距離、地震動の大きさ、継続時間などの厳しい状況下にあったが、驚くほど損傷が少ない」という報告をまとめています。
また、2013年には、世界原子力発電事業者協会(WANO)が、女川原発が日頃から緊急対応の準備に備えてきたこと、震災時には原発3基すべて安全に冷温停止させたこと、そして被災した地域住民を受け入れて地域とともに困難を乗り越えたこと、の3点を理由に、震災当時の女川原発所長に原子力功労者賞を授与しています。
● 女川原発が示した 現場で働く人たちの功績
ちなみに、女川原発は震災後も更なる安全対策の強化に取り組んでいます。想定津波の高さを13メートルから23メートルに見直し、防潮堤をこれまでの海抜17メートルから29メートルの高さにまでかさ上げする工事を筆頭に、震災の被害を受けた施設や設備の修復・強化、海抜の高い位置での非常用電源の増加、訓練の強化など様々な取り組みが行なわれています。
そして、そこでは関連会社も含めて2000名もの人員が女川原発の安全強化のために日々頑張っていました。これはよく考えると大変なことです。
事故を起こした福島第一原発がBWR型(沸騰水型炉)であったため、現在、原子力規制委員会の安全審査が進んでいる原発、当面再稼働が予定されている原発はPWR型(加圧水型炉)ばかりです。一方、BWR型の女川原発も安全審査を申請しているものの、いつ審査が行なわれて再稼働できるかの目途もありません。
つまり、再稼働という具体的なゴールがまったく見えないのが現在の女川原発なのです。それにも拘らず、それだけの投資を続ける東北電力も経営の観点から大変ですが、それ以上に、現場で働く人がモチベーションを維持して日々頑張るというのもすごく大変なはずです。
このように、女川原発を視察して感じたのは、福島原発での不幸な事故はあったものの、やはり日本の原子力技術の水準は高く、それを支えているのは原発の現場で働く人たちに他ならないということです。
ついでに言えば、今年も原発ゼロで乗り切れたのは、石油や天然ガスに高いコストを払っていることもさることながら、運転開始から40年以上経過して本来ならお役御免の老朽火力発電所もフル稼働させたからであり、それが可能となったのも火力発電所の現場でメンテナンスなどを頑張っている人たちのおかげなのです。
川内原発の再稼働が近づくにつれ、「原発事故が起きるリスクはゼロではない」といった主張がまた目につくようになってきました。もちろんそれは事実ですし、私も電力会社の経営陣の肩を持つ気はまったくありません。しかし、そのリスクを極限までゼロに近づけようと現場で頑張っている人たちまで無視しては可哀想です。
東日本大震災で福島原発は事故を起こしましたが、女川原発は無事でした。そうした現実を踏まえて、個々の電力会社、個々の原発の安全確保の体制や取り組みを調べてみることも必要ではないでしょうか。それなしにすべての原発を一括りにして再稼働反対と叫び続けるのは、生産的な議論ではないように思えます。
● 女川原発と福島第一原発の決定的な違い
女川原発は東日本大震災の震源地から130キロしか離れていませんでした。福島原発よりも女川原発の方が震源地に近かったのです。だからこそ、地震加速度は女川の方が福島より大きかったですし、女川原発周辺では1メートルも地盤が沈下しました。また、原発に押し寄せた津波の高さは、福島も女川も同じ13メートルでした。
即ち、女川原発は福島第一原発と同じかそれ以上の揺れと津波に教われたのですが、それにも拘らず、すべての原子炉が設計どおりに自動停止し、原子炉や使用済燃料プールを冷却する機能も守られました。さらに言えば、女川原発では、原発サイト内の体育館が避難所として被災された地元の人に提供され、最大で364名の被災者を受け入れました。
どうして福島第一原発と女川原発で震災後にこのような違いが起きたのでしょうか。最大の要因は、女川原発の敷地の高さを14.8メートルにしたことです。女川原発を建設した当時、津波の高さの想定は3メートルだったのですが、文献調査で貞観津波(869年)、慶長津波(1611年)など過去の津波を考慮し、それだけの高さにしたとのことです。
その他にも、電源喪失が起きないように高い場所に電源を置く、原発の管理棟の古いビルに耐震補強工事を行なうなど、考え得るあらゆる安全対策を講じてきたからこそ、女川原発はあの震災を耐え抜いて事故を起こさずに済みました。実際、1984年に女川原発が運転を始めて以降、2010年までになんと6600ヵ所の耐震工事を行なったそうです。
だからこそ、2012年夏に現地調査を行なった国際原子力機関(IEA)が「女川原発は震源からの距離、地震動の大きさ、継続時間などの厳しい状況下にあったが、驚くほど損傷が少ない」という報告をまとめています。
また、2013年には、世界原子力発電事業者協会(WANO)が、女川原発が日頃から緊急対応の準備に備えてきたこと、震災時には原発3基すべて安全に冷温停止させたこと、そして被災した地域住民を受け入れて地域とともに困難を乗り越えたこと、の3点を理由に、震災当時の女川原発所長に原子力功労者賞を授与しています。
● 女川原発が示した 現場で働く人たちの功績
ちなみに、女川原発は震災後も更なる安全対策の強化に取り組んでいます。想定津波の高さを13メートルから23メートルに見直し、防潮堤をこれまでの海抜17メートルから29メートルの高さにまでかさ上げする工事を筆頭に、震災の被害を受けた施設や設備の修復・強化、海抜の高い位置での非常用電源の増加、訓練の強化など様々な取り組みが行なわれています。
そして、そこでは関連会社も含めて2000名もの人員が女川原発の安全強化のために日々頑張っていました。これはよく考えると大変なことです。
事故を起こした福島第一原発がBWR型(沸騰水型炉)であったため、現在、原子力規制委員会の安全審査が進んでいる原発、当面再稼働が予定されている原発はPWR型(加圧水型炉)ばかりです。一方、BWR型の女川原発も安全審査を申請しているものの、いつ審査が行なわれて再稼働できるかの目途もありません。
つまり、再稼働という具体的なゴールがまったく見えないのが現在の女川原発なのです。それにも拘らず、それだけの投資を続ける東北電力も経営の観点から大変ですが、それ以上に、現場で働く人がモチベーションを維持して日々頑張るというのもすごく大変なはずです。
このように、女川原発を視察して感じたのは、福島原発での不幸な事故はあったものの、やはり日本の原子力技術の水準は高く、それを支えているのは原発の現場で働く人たちに他ならないということです。
ついでに言えば、今年も原発ゼロで乗り切れたのは、石油や天然ガスに高いコストを払っていることもさることながら、運転開始から40年以上経過して本来ならお役御免の老朽火力発電所もフル稼働させたからであり、それが可能となったのも火力発電所の現場でメンテナンスなどを頑張っている人たちのおかげなのです。
川内原発の再稼働が近づくにつれ、「原発事故が起きるリスクはゼロではない」といった主張がまた目につくようになってきました。もちろんそれは事実ですし、私も電力会社の経営陣の肩を持つ気はまったくありません。しかし、そのリスクを極限までゼロに近づけようと現場で頑張っている人たちまで無視しては可哀想です。
東日本大震災で福島原発は事故を起こしましたが、女川原発は無事でした。そうした現実を踏まえて、個々の電力会社、個々の原発の安全確保の体制や取り組みを調べてみることも必要ではないでしょうか。それなしにすべての原発を一括りにして再稼働反対と叫び続けるのは、生産的な議論ではないように思えます。
岸 博幸
最終更新:8時00分
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