5月下旬、バレーボール全日本女子の登録メンバー31名の記者会見が行なわれた。中でも注目を集めたのがリベロの宮本小百合である。29歳と遅咲きであるのもさることながら、何よりも驚きをもって迎えられた理由は、宮本が9人制でプレーしている選手であることだ。9人制から選ばれるのは全日本女子史上2人目という事実が、意外性を物語っている。もちろん、宮本自身、初めての選出である。
同じバレーボールとは言え、6人制と9人制では異なるところも多い。人数をはじめとして、9人制ではローテーションがなくネットも低いし、ルールでも細々とした違いがある。レベルが高くなればそれぞれの競技に特化していくことになるから、トップクラスの選手が掛け持ちしているケースはない。
その上で選ばれた理由は、レシーブへの期待だ。9人制はテニスのように1人の選手がサーブを2本打つことができるため、1本目は遠慮なく強いサーブを打てる特徴がある。9人制の大会を観戦していた眞鍋政義監督は、宮本のサーブへの対応を目の当たりにして抜擢を決めた。それは同時に、眞鍋監督が9人制にも目配りしていたことをも示している。
光を浴びる機会がきわめて少ない9人制の星となれるか。
同じリベロのポジションでは、ロンドン五輪まで長年、全日本を支えてきた佐野優子がコーチ兼任として代表に復帰した。佐野をはじめ他のリベロの選手たちから学びつつも競い合っていくことになる宮本は、6人制を「別世界」と感じていたという。テレビなどでも取り上げられることの多い6人制に対し、9人制は光を浴びる機会がきわめて少ない。宮本が所属してきた企業チームが今年1月に廃部となり、その後チーム丸ごとの移籍先が決まったというエピソードも9人制を取り巻く環境を表している。
だから、「早く6人制に慣れたいです」という一方で、手にしたチャンスをいかしたいという強い意気込みがある。
「9人制はサーブがすごいので、速いサーブに対するレセプション(サーブレシーブ)には自信があります」
5月27日から6月1日には国際大会「モントルーバレーマスターズ」にも参加。9月に開幕する世界選手権、さらに2年後のリオデジャネイロ五輪を視野に、宮本のチャレンジが続いていく。
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