サケが小さいのは飢えた古代人のせい?
2014年10月23日
Photograph by Wild Wonders of Europe/Lundgren/National Geographic
スペイン北部の洞窟で発掘された先史時代の魚料理から、タイセイヨウサケ(学名Salmo salar)やブラウントラウト(Salmo trutta)がこの2万年で大幅に小さくなっていることがわかった。両者を平均すると、最大2.2キロから約0.4キロまで変化している。
しかも、スペイン、オビエド大学の研究チームによれば、一帯の川を泳ぐ魚たちがはるかに小さくなった原因は祖先たちの魚のとり方だという。
石器時代の漁師たちは大きな魚ばかりを狙っていたのではないかと、研究チームは推測している。
研究を率いた考古学者のパブロ・トゥレロ(Pablo Turrero)氏は、「大きい魚の方が食べ応えがある」と話す。「小さい魚を捕まえるのはほかに選択肢がないときだけだったのだろう」。
漁師たちが大きい魚を選んで捕まえた結果、小さい魚ばかりが生き残って繁殖し、その遺伝子が受け継がれ、サケやマスが小型化したと考えられる。
魚の小型化が確認され始めたのは約1万年前の化石からだ。「しかし、魚の選り好みはそれ以前から常に行われていたはずだ」とトゥレロ氏は話す。
◆大きな魚、小さな魚
「Royal Society Open Science」誌に22日付で発表された今回の研究では、スペイン北部アストゥリアス州にある先史時代の遺跡10カ所から発掘されたタイセイヨウサケとブラウントラウト約30匹の背骨を現生の子孫の背骨と比較した。
その結果、先史時代の魚の方が現代の川で泳ぐサケやマスより平均16~26センチ長いと判明した。
重さに換算すると、古代のサケやマスは1.3~2.2キロほどあったはずだと、トゥレロ氏は説明する。一方、現在アストゥリアス州の川で釣れる魚は0.4キロに満たない。
トゥレロ氏によれば、洞窟の化石を見る限り、約4万年前にネアンデルタール人に取って代わった現生人類は“この地に移り住むやいなや”、魚とりに夢中になったようだという。
魚料理の食べ残しはシカなどの肉料理ほど多くなかったが、「どこに行っても見つかる」とトゥレロ氏は言い添えている。
◆人間の影響
人間の好みだけでなく、気候変動などの要因も魚の小型化を促している可能性が高いと、研究チームは指摘する。
ニューヨーク州立大学環境科学・森林学カレッジ(College of Environmental Science and Forestry)に所属する魚の専門家カリン・リンバーグ(Karin Limburg)氏も同じ意見だ。
ただし、リンバーグ氏は、「人間がはるか昔からあの地域に暮らしていること、川に上ってくるサケやマスが優れたタンパク質源であることを考えると」、今回の研究結果は「それほど意外ではない」と述べている。
「むしろ印象に残ったのは、人間に搾取されている魚の小型化がまた1つ示されたことだ。さらに調べれば、同様の例がさらに見つかるだろう」。
James Owen for National Geographic News
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2014年10月23日
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